今や副業は珍しいことではなくなりました。周りの人が副業によって収入を増やしていたり、スキルアップしたりするのを見て、羨ましく思う人もいるでしょう。
社会全体の副業に対するネガティブなイメージは無くなりつつあるとはいえ、まだまだ従業員の副業は禁止している企業が多いのが現実です。そうした企業に勤めている限り、副業を諦めるしかないのでしょうか。
今回は副業禁止の企業に勤める人のために、企業に副業がバレないようにする方法を紹介します。併せて企業が副業を禁止する理由や、副業を始めたときに注意するべき点も解説しているので、企業と良い関係を維持しつつ副業に取り組むための参考にしてください。
副業禁止の理由
そもそも企業がなぜ従業員に副業を禁止するのか、その理由を知っておきましょう。政府が副業を後押しし、名だたる大企業が副業を解禁していくなかでも、多くの中小企業には解禁への一歩を踏み出せない理由があります。主な理由は以下の3つです。
- 本業への影響があるから
- 情報漏洩のリスクがあるから
- 労働時間が把握できないから
それぞれ詳しく見ていきましょう。
本業への影響があるから
当然ながら従業員が副業することで、本業の生産性が落ちるのは企業にとって望ましくありません。就業時間後や休日にも働けば疲労がたまり、肝心の本業で十分なパフォーマンスが発揮できない可能性は高いでしょう。
もっと悪いことに、人によっては本業の就業時間中にこっそりと副業の作業をするケースもあります。テレワークの普及によって、企業が従業員を管理することは難しくなりました。副業禁止の規則には、目の届かないところで従業員が本業を疎かにするリスクを少しでも下げるための抑止力の役割もあるのです。
副業の業種によっては、企業はもっと深刻な影響を受けるケースもあります。従業員が同業他社で副業すれば、ライバル企業の競争力を高めることに繋がります。そのままヘッドハンティングされてしまう可能性もあり、優秀な社員ほど副業してほしくないのが本音でしょう。
情報漏洩のリスクがあるから
副業には情報漏洩のトラブルが起きるリスクもあります。従業員が本業の情報が入ったスマートフォンやパソコンを副業で使用した場合、故意ではなくても個人情報や企業ノウハウが外部に漏れる恐れがあるのです。
特に営業職であれば顧客の情報が、人事であれば応募者や他の社員の情報がデバイスに入っているケースもあるでしょう。副業はほとんどの場合が個人で活動するので、本人が気をつけていたつもりでも情報管理のルールが徹底しておらず、ミスが起きやすい環境です。
企業経由で取得した個人情報が漏れてしまった場合、責任の所在は曖昧になります。従業員が就業時間外に起こしたトラブルであっても、企業も何らかの責任を追及される可能性は高いでしょう。
労働時間が把握できないから
副業には従業員の労務管理が難しくなるというデメリットもあります。企業は従業員の副業分の労働時間まで把握できません。そのためそれぞれの従業員が事実上、週何時間労働しているかが分からなくなるのです。
これには時間外労働に対する手当の問題が関係してきます。労働基準法では、労働者が複数の職場で働いている場合、そのすべての労働時間を合算して、1日8時間あるいは週40時間を超えた部分に対し、時間外労働手当を支払うよう定めているからです。
企業がしっかりと法律に従って時間外労働手当を支給するためには、従業員が出勤前に副業していないか、もししているなら何時から何時までだったかなど細かく管理しなくてはなりません。しかしこれでは総務部門に多大な負担がかかり、特に人手の足りない中小企業においては現実的といえないでしょう。
副業禁止の企業にバレる理由
次に企業に副業がバレてしまうケースを具体的に見ていきましょう。副業がバレる主な理由は以下の3つです。
- 住民税の申告によりバレる
- 同僚などの噂でバレる
- 生活水準が上がってバレる
それぞれ詳しく解説します。
住民税の申告によりバレる
住民税は企業に副業がバレる原因の一つです。住民税は本業と副業それぞれの年間収入を合算して、それに対してかかる税額が算出されます。そして自治体によってその税額が本業の企業に通知されるシステムなのです。当然企業は給料に対して多すぎる税額を見て、従業員が副業で収入を得ていると分かります。
人によっては「副業で得た所得が年間20万円以下であれば会社にバレない」と考えている人もいますが、これは所得が年間20万円以下であれば確定申告をしなくてよいことから生まれた誤解です。年間20万円以下の場合は所得税がかからないので確定申告は不要ですが、住民税は確定申告の有無にかかわらず納める必要があります。
つまり住民税の申告で対策をとらないと、副業収入の大小にかかわらず会社にバレてしまうのです。住民税の対策については、のちほど詳しく説明します。
同僚などの噂でバレる
残念ながら、同僚の噂話から副業がバレてしまうケースもよく見られます。副業で収入が得られたり、面白い経験ができると誰かに話したくなるでしょう。しかし少なくとも職場では、副業の話を控えるのが無難です。
信頼している同僚だけに打ち明けたつもりでも、その人が秘密を守ってくれる保証はありません。お酒の席で酔った勢いで話してしまうかもしれないし、その人もまた別の信頼している同僚にだけは喋ってしまうかもしれません。このように少しずつ噂が広まれば、いずれ上司の耳に入ってしまう可能性が高いでしょう。
何よりも副業禁止の企業で副業するのは、ルール違反です。自分がルールを守っているのに、ルールを破った人間が儲けているのを面白くないと感じるのは自然な感情ではないでしょうか。自分は副業の自慢話ができれば良い気分になりますが、相手がどう感じるかも考慮しましょう。
生活水準が上がってバレる
誰にも副業の事実を話さなかったとしても、お金の使い方からバレてしまうケースもあります。収入が増えてつい浪費してしまうのはよくあるパターンです。しかし明らかに以前よりも生活水準が上がっていると、職場でも噂になってしまうでしょう。
特に高い車やブランド物を買ったり、家賃の高い家に引っ越したりすると、同僚も何かおかしいことに気づきます。自分たちにとっては手が届かないものを同僚が購入していれば、企業からの給料以外に収入があると考えるのが自然です。贅沢な生活は嫉みの対象になりやすいので、十分に気を付けなくてはなりません。
企業では普段どおりに振舞っているつもりでも、SNSの投稿からバレてしまうこともあります。高い物を買うと誰かに自慢したくなるかもしれませんが、SNSは誰が見ているか分かりません。匿名アカウントでも、映りこんだ背景など思わぬところから同僚に悟られてしまう可能性があるので注意しましょう。
副業禁止の起業でも副業できる抜け道紹介!
副業禁止の企業でも副業する方法を解説します。企業に副業がバレないポイントを押さえておけば、精神的にも余計なストレスなく、安心して副業に集中できるでしょう。ポイントは以下の2点です。
- 住民税を自分で納める
- 収入の記録を残さない
それぞれ詳しく説明します。
住民税を自分で納める
行政から企業に住民税の額が通知されることで、副業がバレる要因になるのはすでに説明しました。ではどうすれば企業に通知されるのを防げるかというと、住民税を自分で納めればよいのです。
副業の所得が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。確定申告書には住民税の納付方法を選択する欄があるので「自分で納付」にチェックを入れましょう。本人が納付する場合は、住民税を給与から天引きする必要がないので企業に税額は通知されません。
副業の所得が20万円以下の場合は所得税が課せられないので、確定申告は不要です。ただし住民税は必ず納付しなくてはならないので、20万円以下で確定申告しない場合は、各自治体に納付方法について相談しましょう。
収入の記録を残さない(申告義務はある)
念のため、副業の収入の記録を残さないようにするのもいいでしょう。よく「給与を現金で手渡ししてもらえばバレない」と考えている人がいますが、実はこれは大きな間違いです。口座に記録を残さなかったとしても、副業先の企業には給与支払報告書という公的記録があります。アルバイトで給与所得を得る場合、他にも税金や社会保険の手続きで会社にバレるリスクが高くなるでしょう。
おすすめは給与所得ではなく、雑所得や事業所得を得ることです。クラウドソーシングやスキル販売サイトで業務委託の仕事をしたり、ブログの運営で広告収入を得たりなどは、すべて雑所得や事業所得にあてはまります。これらの収入に関しては、すべて自分自身で申告することになるので、思いがけず企業に通知されてしまうトラブルを避けられるでしょう。
副業するときに気を付けること
最後に企業に隠れて副業するとき、注意すべき点を解説します。始めたばかりの頃には緊張感もあり、ほとんどの人は企業での言動にも気を付けているでしょう。しかし収入も増えて、副業が軌道に乗ってきたときは要注意です。もっと副業に力を入れようとして、企業での振舞いにまで気が回らなくなる可能性があります。
副業を頑張れば本業以外の収入源を持てる安心感もあるでしょうが、本業との関係性を良好に保つことは大切です。ここでは特に心がけるべき2つのポイントを紹介します。
社内規定に違反しないようにしよう
副業禁止のルールを破ったとしても、できるだけ社内規定に違反しないようにする心がけが大切です。副業がバレたときに、副業禁止に対する違反だけでなく、他の違反行為をしたことによるペナルティを課されないようにするためです。
例えば情報管理の方法など、リスクがある行為については細かなルールが定められているでしょう。たとえ副業する場合でも、業務以外で企業のパソコンは使用しないなどのルールは厳格に守ることが大切です。
実際のところ、副業禁止のルールを破っただけで懲戒処分を受ける可能性は高くありません。裁判の判例でも情報漏洩で会社に著しい損害を与えたなどの場合を除き、懲戒処分は無効とされています。
裁判にまでならなくても、やはり複数の社内規定に違反していれば企業の心象も悪くなります。どうしても副業せざるを得ない場合も、企業の規定を重んじる姿勢は大切でしょう。
本業で頑張るほうが良いことも
意外に重要なのが、本業で手を抜かずに頑張ることです。副業にかまけて本業でしっかり義務を果たしていないと、周りの反感を買いやすくなります。もし何かの拍子に副業が同僚にバレると、日頃からよく思われていなかったために上司にすぐ報告されてしまうかもしれません。
本業をしっかりと頑張っていれば、周囲からも必要とされて、たとえ副業が知られてもネガティブな受け止め方をされずに済むでしょう。本業で成果を挙げていれば、上司に知られても本業には支障がないことを理由に咎められない可能性もあります。
現在は副業にもさまざまな種類があり、企業が副業禁止のルールを作ったときには想定していなかったような仕事も増えています。副業がバレても禁止すべき仕事かどうか、個々のケースにおいて柔軟に判断してもらえるかもしれません。その際、日頃の業務での信用が重要になることはいうまでもないでしょう。
まとめ
副業禁止の企業で働く人向けにバレる要因や、バレずに副業する方法を紹介しました。しっかりとポイントを押さえて職場での言動にも気をつけていれば、副業がバレる可能性は低くなります。しかしどれだけ注意していても、絶対にバレない保証がないこともまた事実です。
特に副業が好調で収入も増えていくほどに、職場で隠すのが難しくなるでしょう。早めに副業について本業に相談する、副業を禁止していない企業に転職する、あるいは副業で生計が立てられるなら思い切って独立するなど、幅広い選択肢を視野に入れておきましょう。