会社員として働きながら、副業に取り組む人が増えています。これを読んでいるあなたは、なんらかの副業に取り組んでいる、または取り組みたいと考えている人なのではないでしょうか。
なかには個人事業主として開業を考えている人もいるかもしれません。そこで今回は、副業している会社員が個人事業主になるメリットとデメリットを徹底解説します。個人事業主になるための流れや、なったほうが良いケースも併せて触れているので、副業している会社員の人は、ぜひ参考にしてください。
副業している会社員が開業届を出して個人事業主になるメリット
副業しているすべての会社員が個人事業主になる必要はありません。しかし、個人事業主として活動することで得られるメリットはたくさんあります。主なメリットは次の3つです。
- 経費計上できる
- 青色申告できる
- 損益通算できる
それぞれ詳しく解説します。
関連記事:副業で業務委託の仕事を請ける場合も開業届を提出するべき?メリットを解説
経費計上できる
開業届を出して個人事業主になれば、副業に取り組む際にかかった費用を経費として計上可能です。副業の内容にもよりますが、パソコンやインターネット代、スキルを磨くために購入した書籍代などが経費の対象となります。これは大きなメリットです。なぜなら節税効果が期待できるから。
副業で収入を得た場合、確定申告で所得額に応じた所得税を納めなければなりません。所得税は、総収入から必要経費を差し引いた金額で計算されます。つまり経費計上することで所得額を減らせれば、所得税の負担も減らせるのです。
会社員の場合、社内で使う消耗品などは会社で負担してくれますが、業務効率化のために個人で購入した文房具や手帳は自分で負担することになりますよね。単なる自己負担のため、節税はできません。このように会社員ではできない節税対策が可能となるのです。
青色申告できる
毎年1回、条件を満たした個人事業主は確定申告する義務があります。申告の種類は2つ。白色申告と青色申告です。個人事業主として事前に開業届と青色申告承認申請書を提出しておけば、青色申告が利用可能になります。
青色申告には65万円特別控除や赤字繰り越しなど、節税効果のあるメリットがたくさん。ちなみに開業届を出していない副業サラリーマンは青色申告が使えず、白色申告のみとなります。
損益通算できる
損益通算できるのも、会社員をしながら個人事業主になるメリットです。損益通算とは複数の収入源があって一方で利益、一方で損失が発生した場合に相殺できる制度になります。
副業を始めたばかりの頃は、利益が出ず赤字になることもあるでしょう。そのようなとき、本業の給与や賞与から赤字分を相殺できるのです。これにより所得税や市民税を節税できます。
損益通算は、雑所得に認定された所得からは差し引くことができません。個人事業主になり、事業所得として認められた場合に差し引くことが可能です。
副業している会社員が個人事業主になる流れ
副業している会社員が個人事業主になる流れは、以下の通りです。
- 事業用口座とクレジットカードを準備する
- 開業届を税務署に提出する
- 会計ソフトを導入する
詳しく解説します。
事業用口座とクレジットカードを準備する
個人事業主として本格的に副業に取り組むなら、事業用口座とクレジットカードを準備しましょう。プライベートな口座とは分けたほうが、収入管理しやすいからです。
まとめて管理しようとすると、どちらが事業用なのかプライベートなのかわかりづらくなってしまいます。帳簿付けにも時間がかかるでしょう。負担を抑えて効率的に副業に取り組むためにも、専用の口座とカードを作るのがおすすめです。屋号の入った口座なら、取引先に安心感や信頼感も与えられますよ。
開業届を税務署に提出する
個人事業主として活動するなら、開業届を税務署に提出しましょう。提出しなくてもペナルティはありませんが、実は義務付けられています。特に青色申告したい人は提出必須です。開業届と一緒に青色承認申告書も忘れずに提出してください。
提出期限は、事業開始の事実があった日から「1か月以内」。開業届は税務署に行けば入手できますが、国税庁のホームページからもダウンロード可能です。
会計ソフトを導入する
青色申告の場合、複式簿記で帳簿付けしなければならないため複雑になります。簿記の知識がないと、最初はかなりとまどうでしょう。仕訳を1つでも間違えると貸方と借方の計算が合わなくなり、原因の特定にも時間がかかります。
そこでおすすめが会計ソフトの導入です。最近の会計ソフトは、申請内容を入れるだけで自動的に仕訳される機能もあり、帳簿付けの負担を大きく減らせます。合計額も自動計算してくれるので、ミスも防げるでしょう。確定申告の書類も作成してくれるため、提出時期になっても慌てずにすむのではないでしょうか。
個人事業主になったほうがよいケース
個人事業主として開業届を提出するべきか、悩んでいる人もいるかもしれません。個人事業主になったほうがよいケースは次の2つです。
- 年間所得が20万円を超えるケース
- 将来的に独立を考えているケース
詳しく解説します。どちらかに当てはまっている場合は、個人事業主になることを検討してはいかがでしょうか。
年間所得が20万円を超えるケース
会社員の場合、年間(1月1日〜12月31日)で20万円以上の所得を得たら確定申告が必要です。収入が高くなるほど税金の負担は増えますが、個人事業主として開業届と青色承認申告書を提出すれば、大きな節税効果が期待できるでしょう。手間はかかりますが、白色申告に比べて経費として認められる範囲も広くなるので、ぜひチャレンジしてみてください。
将来的に独立を考えているケース
お小遣い程度を副業で稼げればよいと思っている場合は必要ないかもしれませんが、いずれ独立したいと考えている場合は個人事業主として活動するのがおすすめです。
個人事業主は法人設立のように費用も手間もかかりません。開業届を1枚提出すればOKです。とはいえ、個人事業主になることによってビジネスしているという自覚が持てるのではないでしょうか。また、個人事業主になると屋号を持てるようになります。個人名で活動するよりも、信頼感アップが期待できるでしょう。
まとめ
会社員が副業で個人事業主になるメリットとデメリットを解説しました。副業で収入が増えると、税金の負担も重くなりますよね。しかし、個人事業主になって青色申告すれば、大きな節税効果が期待できます。
提出書類や帳簿付けの負担は増えますが、継続的に副業で収入を得たいと考えているならば、個人事業主になることを視野に入れて活動するのがおすすめです。すでにある程度の収入を得ているなら、すぐに開業届を提出して個人事業主になるのもよいでしょう。メリットとデメリットを理解し、自分に合う副業の形を探してみてくださいね。
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▽参考リンク
個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
青色申告制度|国税庁
労働省告示及び適正な請負・業務委託に係る参考資料|総務省