副業で業務委託の仕事を請ける場合も開業届を提出するべき?メリットを解説

2018年の「副業元年」以降、会社員でもパラレルキャリアを目指して副業する人が増えています。インターネットで検索すれば、パソコンだけで完結する仕事が多数あり、誰でも在宅ワークができるので、副業のハードルはこれまでにないほど低くなっているといえるでしょう。

ところで「開業届(かいぎょうとどけ)」について正しく理解し実行している人はどれほどいるのでしょうか。「手間がかかりそう」「副業の収入はそれ程でもないから必要ないだろう」と考える人が多いのではないでしょうか。副業には開業届が必要なのか、きちんと手続きを踏むことで得られるメリットについて解説します。

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開業届の基礎知識

開業届の基礎知識

開業届という言葉を聞いたことがあっても、その役割や必要性を正しく理解している人は少ないのではないでしょうか。自営業者や起業を目指す人はともかく、新卒者として企業に就職した人にはあまり縁がない言葉ですよね。開業届の仕組みや手続きの方法などを解説します。

事業を開始した際に提出する書類

開業届は国や自治体へ開業したことを知らせるため、所轄の税務署へ「新たに事業を開始したこと」「事業用に事務所や事業所を新設すること」などを届け出ることです。これにより、事業収益から発生する所得税を正しく納められるようになります。

開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)は、税務署所定のフォーマットを入手して開業者本人が所轄の税務署へ提出します。全国各地の税務署に足を運べば書式を入手できる他、国税庁のWebサイトからもダウンロード可能です。

A4用紙1枚に、住所・氏名・マイナンバーカードに記載されている12桁の番号などを記入していくだけなので、難しい項目はありません。不明な点は、所轄の税務署や自治体が開催している税理士の無料相談会で相談してみましょう。

手続き日について

開業届は、事業を開始してから1か月以内の提出が望ましいとされています。副業の場合には、「少しずつ収入が増えたためにいつが開業日なのか判別しづらい」ということもあるでしょう。届け出が遅れることによる罰則などはないので、主観で開業日を決定してもかまいません。ただし、納税に関わるため、事業をスタートした年の内に届け出ておいたほうがよいでしょう。

提出時には、本人確認のためにマイナンバーカードを持参しましょう。マイナンバーカードを所持していない人は、免許証に加えてマイナンバー通知カードの写し、またはマイナンバーの記載がある住民票の写しなどがあれば安心です。

2021年の税制改正以降、押印が不要となったため印鑑は必要ありません。直接所轄の税務署へ提出する他、郵送での手続きも可能です。

会社員の副業でも開業届は必要なの?

会社員の副業でも開業届は必要なの?

開業届の提出が必要かどうかは、その業態や収入状況により個々に判断されるため、自身の行っている副業が「事業」にあたるかどうか、迷う人も多いでしょう。開業届を出さないでよいのか、出したほうがよいのかの目安となるケースを解説します。開業届の提出が必要なケースと不要なケースを知っておきましょう。

開業届の提出が必要なケース

事業とは、何かしらの事業に対して対価を支払ってもらい収入を得る業態を、独立して継続的に行うことです。一定の利益を得ており、事業所得として認められる場合には開業届の提出が必要です。

事業所得とは、農業・漁業・製造業・卸売業・小売業・サービス業、その他の事業から生ずる所得のことで、不動産の貸し付けや山林所得、譲渡所得に該当する所得は除かれます。副業でマンションの一口オーナーをやっている場合には、不動産所得になるので事業所得に含まれません。ただし、不動産のなかでも有料駐車場などは、運営・管理責任が伴うため、事業所得または雑所得として計上されます。

開業届の提出は事業者の義務とされていますが、提出しないことによる罰則は特に定められていません。そのため、開業届を出さずに収入を得ている人もいるのが現状です。

開業届の提出が不要なケース

会社員の副業は、小売業やサービス業に該当するものが多いのではないでしょうか。これらは基本的には事業所得として計上されますが、開業届の提出が不要なケースもあります。

収入が不定期かつ単発的で継続性のない場合は、事業所得とはいえません。これらは「雑所得」に分類されますが、事業所得と雑所得の区分けに明確な基準はありません。

以下のケースを参考に判断し、不安な場合には収入発生の頻度や副収入の月額、本業との総計などを整理して所轄の税務署へ相談しましょう。

開業届の提出が不要な副業

  • 日雇いアルバイト
  • 私的な不要品をフリマアプリやネットオークションで販売する
  • ハンドメイド品を年に数回販売する
  • スキルシェアマーケットで不定期に依頼がある
  • 業務委託で不定期にプログラミングの仕事がある
  • 動画配信でおこづかい程度の収入を得る
  • FXによる利益 など

関連記事:サラリーマンが副業で個人事業主になるべきタイミングは?準備するべきことも解説

副業で業務委託の仕事を請けたけど収入が少ない場合はどうなる?

業務委託での副業と開業届の関係を整理してみます。会社員の副業として業務委託案件を請け負っているのであれば、雑所得に分類されるので、開業届の提出義務はありません。ただし、継続的に利益を得ているのなら、事業所得に分類するのが適当と判断されることもあります。

また、もう1つの判断基準として、副業の年収額があります。会社員として給与所得を得ている人が業務委託の副業で報酬を得た場合、所得が20万円以内であれば確定申告の必要がないため、開業届も必要ないでしょう。

副業の年収が20万円以上、目安として副業の月収が2万円以上ある人は確定申告が必要なので、開業届を提出しておくと得られるメリットが大きい場合があります。

また、給与所得が2000万円を超える人も確定申告が必要なので、副業での収入があればその際に、事業所得や雑所得も合算して申告しましょう。

関連記事:業務委託契約の注意点とは?トラブル事例や確認するべきポイントも解説

会社員が副業で開業届を提出するメリット

会社員が副業で開業届を提出するメリット

副業には開業届が必要かもしれないと知っても「手続きが面倒」「メリットがわからない」と二の足を踏んでしまう人もいるでしょう。開業届を出さないでいるよりも、開業届をきちんと提出することで得られるメリットを3つ解説します。

青色申告が可能になる

所得税額を算出する確定申告には、2種類の申告方法があります。提出書類の色から「白色申告」「青色申告」と呼ばれていますが、開業届を提出しておくと青色申告が可能になります。

青色申告には、以下のメリットがあります。

・最高55万円分(電子申告なら最高65万円分)の所得控除を得られる
・損失の繰り越しを3年間できる(損益通算)
・家族への給与を経費にできる(青色事業専従者給与)
・減価償却資産(30万円未満)を一括で経費扱いにできる

副業の収入が年間65万円前後であれば、実質的に所得税を0円にできます。新しく購入したパソコンなども経費扱いにできるので、副業のスタート時から青色申告にしておくと大きなメリットを得られるでしょう。

関連記事;在宅ワークに確定申告は必要?いくらから?いつまで?どうやって?

経費の範囲が広がる

青色申告には「青色事業専従者給与」というメリットがあります。これは家族への給与を経費にできる仕組みです。副業の仕事を家族に手伝ってもらっている部分があれば、給与額を設定し経費を増やすことで節税効果をより高くできるでしょう。

損益通算できる

青色申告のメリットの1つである損益通算とは、その年の所得(不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得)に赤字があった場合、損失分を総所得金額などから控除できる制度です。また、前年も青色申告をしていて黒字であり、当年が赤字となった場合、損失の繰り越しをせずに税金の還付を受ける「損失の繰り戻し」を選ぶこともできます。

所得が雑所得の場合には損益通算できないので、開業届を提出することで収入の多寡にかかわらず副業の所得を事業所得としておくことが大切です。

会社員が副業で開業届を提出するデメリット

さまざまなメリットが得られる開業届ですが、会社員が開業届を提出するとデメリットだと感じられる事態も起こり得ます。2つのポイントを解説するので、自身が開業届を提出した場合にはどのようになるのかを想定して届け出るかを判断しましょう。開業届の提出・未提出に罰則はないので、デメリットがメリットを上回ると感じる場合には「開業届を出さない」という判断をとっても問題ありません。

手続きに手間がかかる

青色申告ができるようになると節税面でのメリットが大きくなりますが、申告時の必要書類が複雑なものとなります。白色申告であれば「確定申告書B」「収支内訳書」があればよいのですが、青色申告では「確定申告書B」「青色申告決算書」「貸借対照表と損益計算書」「第三表・第四表」などが必要です。

事業実態がわかるように帳簿付けは複式であることが義務付けられ、保存帳簿は用途に合わせ、総勘定帳・仕訳帳・現金出納帳・売掛帳・買掛帳・固定資産台帳などが必要になります。

これらをきちんと管理しようとすれば、企業の経理部門と同等の知識・スキルが必要となるでしょう。節税効果と経理業務にかかる時間とを比較して、メリットが感じられないようなら白色申告のまま確定申告としたほうがよいでしょう。

失業手当を受けられない

失業手当は企業に雇用されて働いていた人が失業した際に、雇用保険の被保険者であった期間やその間の給与額によって算出された金額を受給できる制度です。開業届を出した人は自営業者に分類されるため、提出するタイミングによっては失業手当を受けられない事態となります。

失業手当を誤って受け取った場合には、不正受給として罰せられる可能性もあります。開業届やキャリアチェンジのタイミングは慎重に検討しましょう。

開業届を提出したら本業にバレる?

開業届を提出したら本業にバレる?

会社員が副業を始める際に「勤め先にバレたらどうしよう」「開業届を提出すると副業がバレるのでは」と不安になる人が多いようです。まずは勤め先が副業を禁止しているのか、禁止しているのならどういった理由からなのかをチェックしておきましょう。

「創業時の社内規定でそうなっているから」という理由であれば、国から副業が推奨されている今、実際にはもっと柔軟な対応をとってもらえることがあります。

また、開業届の提出が勤め先に副業していることが知られる要因とはなりません。勤め先が知るタイミングとしては住民税額の変化が考えられるので、住民税の通知書が自宅へ送られるようになる「普通徴収(自分で納付する)」を選択しておきましょう。

他にも「特に理由なく年末調整を取りやめて確定申告する」「副業しているところを同僚に目撃される」などから副業を察せられる可能性があるので、落ち着いて理由を説明できるよう回答を準備しておきましょう。

関連記事:副業するなら個人事業主になるべき?メリットとデメリットを解説

まとめ

在宅ワークが可能な仕事が増え、副業OKといった条件で募集している求人も数多く見受けられるようになりました。業務委託契約で報酬を得るスタイルは、会社員の副業に向いています。

副業するなら開業届が必要になるかどうかは気になるところですね。開業届を提出すると節税効果が大きくなるので、本業以外の収入が20万円以上になりそうなタイミングで提出するかどうか判断することをおすすめします。

ただし、確定申告の際に青色申告の準備をするのは想定以上に負担となるかもしれません。年末に慌てることのないよう普段から準備しておくか、経理業務にかかる時間と節税効果とが見合わないと感じるなら、「開業届を出さない」と判断して提出を見送ることも検討しましょう。

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▽参考リンク
個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
青色申告制度|国税庁

労働省告示及び適正な請負・業務委託に係る参考資料|総務省

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