業務委託契約とは?雇用契約との違いやメリット・デメリットを解説

在宅ワークの仕事を探すとき、よく目にする言葉に「業務委託契約」というものがあります。業務委託は「自由度の高い働き方」といわれますが、企業に所属して働くことに比べて、どのような点で違いがあるのでしょうか。
また「自由」が業務委託のメリットだとすれば、デメリットはないのでしょうか。業務委託契約の法律的な側面からメリット・デメリット、実際に企業やクライアントと契約する際の注意点まで、詳しく解説します。

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業務委託契約とは?

業務委託契約とは?

日本国内で働く場合、働き手は企業やクライアントと契約を結びます。契約にはおおまかに「雇用契約」と「業務委託契約」があることが知られていますが、詳細な違いや内容を把握している人は少ないのではないでしょうか。雇用契約は、民法623条に定義されている契約です。しかし、業務委託契約という用語は法律上存在しません。

業務委託契約とは、企業体やクライアント自身で対応しきれない業務を、同業他社やフリーランスの個人などの外部組織に委託する契約です。従って、民法で定義されている委任契約や準委任契約、請負契約のいずれかに沿った契約とされています。業務委託契約に関わる人は、それぞれの違いを知っておきましょう。

委任契約

委任契約とは民法643条に定義されている、弁護士・会計士・税理士・司法書士などへ法律行為を委託する契約です。法律行為とは、成果物や納品物が発生する業務ではないなかで、法律的な意思表示などを代行することを指します。

具体的には、弁護士へのトラブル解決の依頼や不動産業者への売却代行依頼などが挙げられます。たとえ意思表示の結果が依頼人の意に沿わない結果に終わっても、契約時に定めた報酬が発生します。

準委任契約

準委任契約とは民法656条に定められている、事実行為(事務処理)を委託する契約です。運用ルールは、おおむね委任契約に準じます。ただし、委任契約が法律行為を委託するのに対して、準委任契約は法律行為以外を委託する点で異なります。準委任契約の例としては、コンサルティング契約やシステム開発契約、清掃契約などが挙げられます。

請負契約

請負契約は民法第632条に定められています。働き手が仕事を完成・納品することを請け負うもので、発注者はその成果物に対して報酬を与えます。請負契約の例としては、工務店に戸建て住宅の建築を依頼する、デザイナー・ライター・プログラマーに制作物を依頼する、楽団へ演奏を依頼する、などが挙げられます。

当事者同士が対等な関係にある点では準委任契約と同じだとも捉えられますが、請負契約は、成果物に欠陥があった場合「瑕疵(かし)担保責任」が問われ、報酬に影響がある点で異なります。

業務委託契約と雇用契約の違い

企業で働く会社員は、雇用主と「雇用契約」を結びます。働き手は雇用主と主従関係となり、法律上は労働力を提供する「労働者」と呼ばれます。労働者は雇用主の指示・命令に従って働き、雇用主が定めた給与を得ます。

業務委託契約で働く人は、仕事相手とは「委託者と受託者」という対等な関係にあり、委託者には、受託者へ業務についての細かな指示や命令をする権限はありません。受託者は、仕事の進め方や受託する仕事の量、労働時間や休日などについて、契約に反しない範囲で自由に設定できます。

雇用契約を結んで働く人は労働者に該当するため、「労働基準法」や「労働契約法」といった労働法で保護されます。しかし、業務委託で働く人は「労働者」ではないため、これらの法律が適用されません。「労働者であるかどうか」が、雇用契約と業務委託契約の大きな違いです。

業務委託契約のメリット

業務委託契約のメリット

業務委託契約にはどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的な3つのメリットについて解説します。

案件を自由に選べる

業務委託契約の場合、企業やクライアントと仕事を請け負う人は対等な立場です。請け負いたい案件を自分で選んだり、業務を打診された際には断ったりもできます。

会社員の場合には、望まない人事異動や転勤により「思うようにスキルを伸ばすことができない」などの悩みがあるかもしれません。自分で仕事を選べる業務委託なら、専門スキルを活かせる仕事に絞って案件を選んだり、請け負う仕事の幅を広げるためにさまざまなことに挑戦したりと、自分らしくキャリアデザインを進めることができるでしょう。

働く時間や場所を自由に選べる

業務委託契約の案件では、成果報酬制をとっているケースが主流です。契約上で特に定めがなければ、働く時間や場所を自由に選べます。

インターネット環境があれば完了できる仕事の場合、納品日さえ守れれば、たとえ海外からでも仕事ができるのです。勤務地や事業所へ、決まった時間に出勤しなければならないことの多い雇用契約に比べて自由度が高く「田舎暮らしをしながら首都圏と同レベルの賃金を得たい」「通勤ラッシュを避けて仕事をしたい」「日本全国でワーケーションをしたい」といった働き方も可能です。

また、仕事をする時間帯も「朝活として仕事をして、午後はゆっくり過ごしたい」「子どもが寝静まってから集中して仕事をしたい」「土日に副業をしたい」など、個々人の事情に合わせて選べるため、ワークライフバランスを考慮した働き方ができます。

がんばった分だけ報酬を得られる

成果報酬制では収入の上限なく働けるので、案件を請け負うほどに稼ぐことができます。会社員の多くは月給制であり、雇用条件によってはどれだけ苦労をしても忙しくても、働いた時間分の残業代がつくだけで不満を感じることがあるでしょう。成果報酬制の案件では、効率良く仕事をこなすことで、1時間あたりの報酬額をアップさせることができます。

また、質の高い仕事を納めてクライアントから信頼を得られれば、1件あたりの単価を上げることもできるでしょう。スキルアップすることで、より単価の高い案件への挑戦も可能になり、がんばりが報酬に如実に反映するため、モチベーションを保ちながら仕事を続けられます。

業務委託契約のデメリット

業務委託契約には、その特徴的な働き方や雇用契約との違いから、デメリットとも感じられる要素がいくつかあります。代表的な3つの要素について解説します。

収入が保証されていない

業務委託契約は、案件ごとの単発的な契約で仕事を請け負うことが多く、長期的な収入は保証されません。また、継続案件があってもその案件が終わった後には、新たに仕事を請け負えるよう営業をかけたり、他の企業の案件を探したりしなければなりません。

収入を安定させるためには、請け負っている業務を進めることと同時進行でクライアントとの関係づくりや案件終了に備えた仕事探し、単価アップのためのスキル磨きなどが必要となり、これらを計画的に進めることが大切です。

すべて自己責任

業務委託契約は、いわばフリーランスとして個人で活躍するという働き方です。仕事の獲得はもちろん、納品書・請求書の作成や口座管理、経費計算や納税関連など、業務に関わるすべての事務手続きを自分で行うことになります。

また、自己責任の範囲は、パソコンやインターネット通信などの仕事環境を整えることや体調管理までが含まれます。チームで働いていれば「パソコンがフリーズしたので、詳しい人に助けてもらいたい」「子どもが熱を出したのでしばらく様子をみるため、業務の再振り分けをお願いします」といった事態にも対応してもらえるでしょう。

しかし、個人で働く場合には、すべて自己責任で納品まで進めなければなりません。プレッシャーだと感じることもあるでしょう。

関連記事:副業で業務委託の仕事を請ける場合も開業届を提出するべき?メリットを解説

労働基準法が適用されない

労働基準法が適用されないのもデメリットです。

サブロク協定が適用されない

業務委託契約で働く人は雇用契約で働く労働者とは異なるため、労働基準法が適用されません。労働基準法36条では、労働者の健康を守るため1日あたりの業務時間や時間外労働の上限時間などが設定され、使用者がこれに違反すると罰せられます。

しかし、業務委託で働く人は基本的に労働基準法の対象外なため、クライアントの望むままに働いたり、複数の企業から仕事を請け負ったりしていると、健康を害するほどに仕事を抱え込むことになってしまうかもしれません。

残業代や割増賃金の設定がない

業務委託契約の条件に、規定以上の労働について割増賃金などを盛り込めればよいのですが、一般的には残業代や割増賃金は設定されないことが多いでしょう。業務委託契約は、深夜アルバイトなどに比べて稼ぎにくいと感じることがあります。

労働保険(雇用保険・労災保険)がない

雇用保険とは、退職・解雇された際に失業手当が支給される保険です。労災保険とは、通勤中や業務中の事故によるけがなどに対して保障がなされる制度です。業務委託契約にはこれらがないため、働き手側の不利益とも思われる事態が起こり得ます。

社会保険(健康保険・厚生年金保険)がない

社会保険は国民の義務であるため、国民健康保険および国民年金へ自己加入する必要があります。会社勤務のときには実感しにくい費用ですが、個人で支払うと負担感が大きいでしょう。

業務委託契約を結ぶ際の注意点 

業務委託契約を結ぶ際の注意点 

業務委託の案件は、契約を結んで行います。自身の利益を守りながら業務が円滑に進められるよう、契約を結ぶ際に注意しておきたい点を3つ解説します。

業務内容を明確にする

案件を請け負う際、業務の内容が明確に記載・指示されていないと「依頼したものと違うので報酬は支払えない」「こういう指示だと思っていた」などとのトラブルに発展するリスクがあります。トラブルを未然に防ぐために、契約書や付帯資料に仕事の内容や納品形式をできるだけ具体的に記載しておくことをおすすめします。

また、契約時点では詳細が不明な場合や関連する業務が発生する可能性がある場合には「甲乙間で別途合意した業務を含む」としておき、業務が発生した都度、詳細を詰めていきましょう。

報酬額と支払い期限を明確にする

契約書には、報酬額と支払い期限を明記しておくことが大切です。「案件終了後の一括払い」「月割りの分割払い」「月末締め翌月20日に、受託者指定の金融機関口座に振り込む」など、案件の性質により、取り決めのタイプが異なります。また「振込手数料は〇〇の負担とする」など、手数料の負担についても明記しておくと安心です。

責任の所在を明確にする

働き手(受託者)がクライアント(委託者)に損害を与えた場合、損害賠償が請求されることがあります。責任の所在を明確にしておかないと、受託者の責任外の部分にまで請求が及んだり、無制限に賠償請求されたりするリスクがあります。

契約書を用意するのは委託者側のことが多いのでスルーしてしまいがちな項目ですが、受託者側の不利益とならないよう、自身の考えや業界ルールを伝えて整備しましょう。

同様に「秘密保持」「瑕疵(かし)担保期間」「著作権の取り扱い」についても明確にしておくと安心です。

まとめ

業務委託契約は雇用契約とは異なる働き方のため、メリット・デメリットがあります。自由度が高いことと引き換えに、自身の責任の範囲が大きかったり、がんばりが報酬に反映されやすい反面、収入が保証されなかったりします。また、労働法が適用されないので働きすぎに気をつけ、失業時の対応について備えておく必要があります。自身の目指すキャリアや働き方をイメージして契約書に盛り込み、トラブルなく業務を進められるよう注意しましょう。

業務に関わるすべてが自己責任となるため、事業運営や納税関係の知識も必要になります。開業届を出して青色申告をすればさまざまなメリットが受けられるので、業務委託契約での副業を予定しているのなら、開業届けについても早めに検討しておきましょう。

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▽参考リンク
個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
青色申告制度|国税庁

労働省告示及び適正な請負・業務委託に係る参考資料|総務省

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