【個人事業主向け】業務委託で報酬を得た場合の確定申告はどうなる?

働き方の多様化によって、会社員ではなく個人事業主として働く人が増えています。しかし、個人事業主は会社員と違って仕事獲得や会計処理など、すべて一人でこなさなくてはなりません。

なかでも気になるのが、契約や税金に関することではないでしょうか。業務委託契約や確定申告という用語を耳にしたことはあっても、詳細がわからない人も多いかもしれません。しかし、個人事業主として活動するからには必須の知識です。

そこで今回は、業務委託とはどのような契約形態なのか、どのような条件で確定申告が必要になるのかを丁寧に解説します。申告の流れにも触れているので、ぜひ最後までご覧ください。

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そもそも業務委託とは?

そもそも業務委託とは?

そもそも業務委託とは、どのような意味なのでしょうか。簡単に言えば、自社業務の一部を外部企業や個人事業主に任せることです。個人で仕事を請け負う際は、業務委託契約を結んで業務を遂行するケースが多くあります。

企業に雇用されて労働する雇用契約との大きな違いは、両者の関係性です。雇用契約の場合は企業側と労働者が主従関係にあるため、労働者は企業の指示に従って業務を遂行します。

一方、業務委託契約は委託者と受託者の関係が対等です。出勤日や労働時間の他、業務の遂行方法などは支持されず、契約時に決められた業務や成果物を納品することで報酬が支払われます。

関連記事:副業で業務委託の仕事を請ける場合も開業届を提出するべき?メリットを解説

業務委託契約には委任契約と請負契約がある

実は業務委託契約という名称は、法律上にありません。民法上に定義された「委任契約」と「請負契約」を総称して業務委託契約と呼んでいます。ここではそれぞれの違いを解説します。

委任契約・準委任契約

委任契約は成果物の納品ではなく、業務を遂行することで報酬を受け取る契約です。例えば新入社員の教育を請け負った場合、教育のための研修を開催すれば報酬が支払われます。新入社員が研修によって成果を出せなくても責任はありません。

また「店頭に立って商品を9時〜17時までに200個販売する」という委任契約をした場合も同様です。200個全部を売り切る必要はなく、9時〜17時まで店頭に立って販売していれば報酬が支払われることになります。

このように成果が出ずとも業務を遂行して報酬をもらえるなら、委託者側にとって損なのではと考える人もいるでしょう。しかし、委任契約の場合は受託者に「善管注意義務(ぜんかんちゅういぎむ)」が発生します。これは社会通念上、または客観的に当然要求される注意を払う義務のことです。

つまり、適当に業務を遂行することは許されず、責任ある行動が求められるということです。これは委任契約に限らず、社会に出て報酬を受け取りながら働く人にとっては当然のことといえるでしょう。

ちなみに委任契約は、さらに細かく分けると「委任契約」と「準委任契約」の2つになります。大きな違いは、業務内容に法律が関係するかどうかです。委任契約は法律に関係する業務を委託する際に結ぶ契約で、税理士や弁護士と契約する際は委任契約に該当します。

一方の準委任契約は、法律行為に該当しない業務の遂行を委託する際に結びます。例えば、プログラマーや企業コンサルタントに委託する場合は準委任契約に該当します。

請負契約

請負契約は業務の完成をもって報酬を受け取る契約です。契約時に完成物と納期を決め、期日までに納品します。完成物に不備があれば、修正して再納品しなければなりません。

先ほどの「店頭に立って商品を9時〜17時までに200個販売する」という契約が委任契約なら200個売らなくても報酬を受け取れますが、請負契約では200個販売するまで報酬を得られません。200個販売が業務完成の条件となるからです。他にもWebライターやWebデザイナーが、記事やサイト制作の完成を条件とした場合は請負契約に該当します。

個人事業主が業務委託で報酬を得たら確定申告は必要?

個人事業主が業務委託で報酬を得たら確定申告は必要?

「個人事業主になったら、必ず確定申告しなければならないの?」と、疑問に思う人もいるでしょう。しかし、すべての人が確定申告する必要はありません。ここでは必要なケースと不要だけどしたほうがよいケースをそれぞれ解説します。

確定申告が必要なケース

企業に所属せず完全な個人事業主として活動している人の場合は、年間所得額が48万円以上になった場合に確定申告が必要になります。年間所得とは、1年間に稼いだ金額の合計から経費を差し引いた金額のことです。総収入とは異なるので注意しましょう。

企業に勤めながら副業で個人事業主として活動している人もいると思います。その場合は年間所得額が20万円以上となった場合に確定申告が必要です。一定の金額を安定して稼いでいる場合は、基本的に確定申告が必要になります。日頃から領収書や帳簿付けなど準備しておきましょう。

確定申告が不要だけどしたほうがよいケース

前述で示した金額よりも所得額が下であれば、確定申告は不要です。ただし、確定申告したほうがよいケースもあります。例えば、業務委託先から源泉徴収されている場合です。この場合、払いすぎた税金が還付される可能性があるため、確定申告したほうがよいでしょう。また青色申告を選択している場合は、赤字繰り越しや繰り戻しができるので確定申告するのがおすすめです。

例えば1年目が赤字で2年目が黒字だった場合、1年目の赤字分を2年目の黒字分から差し引いて所得税が算出されます。1年目の赤字額が100万円で2年目の黒字額が100万円だった場合、全額相殺できるので所得税が課税されません。大きな節税となるでしょう。逆に1年目が黒字で2年目が赤字だった場合、前年も青色申告していれば、1年目に支払った税金の還付を受けることも可能です。

個人事業主が業務委託で報酬を得た場合の仕訳は

個人事業主が業務委託で報酬を得た場合の仕訳は

契約する企業によっては、源泉徴収される場合があります。源泉徴収とは源泉徴収義務者が報酬を支払う際に所定の方法で所得税額を計算し、報酬額から差し引いて代わりに国に納付する制度です。ここでは個人事業主が報酬を得た場合の仕訳を、源泉徴収がある場合とない場合で解説します。

源泉徴収がない場合

源泉徴収がない場合は、一般的な仕訳をします。

例:Webサイトが完成したので委託先に納品し、10万円の請求書を渡した。翌月末に現金10万円が入金された

【売上発生時】

借方:売掛金 10万円 貸方:売上 10万円 適用:原稿料

 

【報酬入金時】

借方:現金 10万円 貸方:売掛金 10万円 適用:原稿料

報酬額が確定しても実際には入金されていないため、売掛金で処理します。入金されたら改めて仕訳しましょう。

源泉徴収がある場合

源泉徴収されている場合は少し仕訳が複雑になります。以下のように仕訳しましょう。

例:Webサイトが完成したので委託先に納品し、10万円の請求書を渡した。翌月末に源泉徴収額1万円が差し引かれ、現金9万円が入金された

【売上発生時】

借方:売掛金 10万円 貸方:売上 10万円 適用:原稿料

【報酬入金時】

借方:現金 9万円 貸方:売掛金 9万円 適用:原稿料

借方:仮払税金 1万円 貸方:売掛金 1万円 適用:源泉徴収税

報酬入金時に源泉徴収を支払っていることになるので、仮払税金で処理します。事業主貸でもかまいません。事業主貸で処理する場合は、補助科目を作成しておくと確定申告がスムーズです。

個人事業主が確定申告する流れ

個人事業主が確定申告する流れ

最後に個人事業主が確定申告する流れを大まかに解説します。間違いがないようにチェックしておきましょう。

必要書類を準備する

確定申告にはいくつかの書類が必要です。青色申告する場合に必要な書類は以下です。

  • 確定申告書
  • 青色申告決算書
  • 生命保険や医療費控除書類

確定申告書はこれまでAとBがありましたが、2022年(令和4年)分からAが廃止されてBに一本化されます。また医療費や生命保険の控除を受ける場合は、それぞれ必要な書類を準備しておきましょう。

必要事項を記入する

書類が準備できたら必要事項を記入します。確定申告書には総収入額や所得額、収める税金額を項目に沿って記入していきますが、初めてだとどのように計算してどこに記入するのか迷ってしまうかもしれません。

そこでおすすめなのが、会計ソフトの確定申告作成機能か国税庁の確定申告書作成コーナーの活用です。指定されたとおりに金額を入力するだけで自動的に確定申告書が作れるため、初心者でもスムーズに作業できるでしょう。

期間内に提出する

確定申告は提出時期が決まっています。遅れると延滞税を課せられるケースがあるため、早めに作成して提出しましょう。提出期限は毎年2月16日から3月15日までです。それぞれの日付が土日や祝日に重なる場合は翌日、または翌々日の月曜日となります。

提出方法は窓口の他、郵送やe-Taxでも可能です。e-Taxを利用する場合は利用者識別番号や電子証明書の取得が必要になりますが、インターネット上で完結できるためおすすめの方法です。

納税・還付金受取

申告後、正しい納税額が通知されます。支払方法は現金や口座引き落とし、クレジットカード払いの他、QRコードやe-Taxなどでもできます。自分に合った方法で期日までに納税してください。還付金がある場合は、申告書に記載した口座に振り込まれます。振り込まれる日は申告方法や時期にもよりますが、2週間から1か月半ほどを目安にしておくとよいでしょう。

まとめ

個人事業主で仕事を請け負う場合、業務委託契約を結ぶケースが一般的です。委任契約や準委任契約、請負契約によって責任が異なりますので、契約時に確認しておきましょう。

また一定の金額を稼いだら、確定申告も必要です。申告が遅れた場合はペナルティが課せられるケースもあります。正しい税金を納めるための大切な手続きのため、忘れずにしましょう。

源泉徴収されている個人事業主の場合は納めすぎた税金が還付される可能性があるため、確定申告の対象外でも申告したほうがおすすめです。また青色申告を選択している場合も赤字の繰り越しや繰り戻しが可能なので、申告しておくとよいでしょう。

▼こちらもおすすめ
業務委託契約とは?雇用契約との違いやメリット・デメリットを解説
在宅ワークに確定申告は必要?いくらから?いつまで?どうやって?

▽参考リンク
個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁
青色申告制度|国税庁

労働省告示及び適正な請負・業務委託に係る参考資料|総務省

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