働き方改革や新型コロナウイルスの影響で、副業に興味を持つ人や実際に挑戦する人が増えてきました。これに伴い、副業を認める企業も増加傾向にあります。しかし、従業員の副業を認めることを迷っている担当者は多いのではないでしょうか。
今回は副業を認めることによる企業側のメリットとデメリットを詳しく解説します。実際に副業を認めている企業の事例も紹介するので、副業解禁を迷っている担当者は参考にしてください。
副業を許可する企業側のメリット
収入アップや視野が広がるなど、働く側にとって副業するメリットはたくさんあります。しかし、働く側だけではありません。企業側にとっても、さまざまなメリットが期待できると考えられるでしょう。副業を可能としている会社側の主なメリットは次の3つです。
- 従業員の質が高まる
- 定着率が向上する
- 事業拡大のチャンスが広がる
具体的に見ていきましょう。
従業員の質が高まる
副業を認めることで、自社では得られない経験やスキルを身に付けることが可能です。そのため、従業員の質向上が期待できます。得たスキルや経験を本業で活かしてもらえれば、業務効率化や生産性を高めることにもつながるのではないでしょうか。
例えば自分で事業を立ち上げた従業員なら、副業を通して経営スキルを学ぶ機会があるでしょう。学んだ経営者視点の考え方を本業で活かすことで、業務全体のフローにも新たな工夫が生まれるかもしれません。
定着率が向上する
従業員の流出を防ぐメリットもあります。なかには新しいスキルを身に付けたいと考えて、転職を決める従業員もいるでしょう。もし向上心がある優秀な社員だった場合、企業にとって大きな損失ですよね。
しかし、副業を認めれば従業員は退職せず新しいことにチャレンジできます。そのため、優秀な人材の流出を防ぐ効果も期待できるでしょう。
事業拡大のチャンスが広がる
従業員の質が高まることに関連しますが、副業で得たスキルや経験を本業で活かしてもらうことで、事業拡大のチャンスが広がることも期待できます。外部で築いた人脈が将来的に顧客となったり、強力なビジネスパートナーになることもあるかもしれません。新しいビジネスアイディアが生まれるきっかけにもなるでしょう。企業側がコストをかけずとも、新たな情報や人脈が入ってくるのは大きなメリットといえるのではないでしょうか。
企業が副業を許可する企業側のデメリット
企業側が副業を許可するにあたって、あるのはメリットだけではありません。考えられる主なデメリットは、次の3つです。
- 健康管理が難しくなる
- 情報漏洩のリスクがある
- 労務管理が難しくなる
副業解禁の際は起こりえるリスクを把握し、対応できる策を考えておく必要があるでしょう。具体的に解説します。
健康管理が難しくなる
副業すると労働時間が増えるため、健康管理が難しくなる可能性があります。従業員が副業に多くの時間を割くようになって体調不良を引き起こせば、本業の業務効率やクオリティが低下する可能性もあるでしょう。
働き方・休み方改善ポータルサイト|厚生労働省
情報漏洩のリスクがある
情報漏洩のリスクも高まります。本業で知り得た情報やノウハウを、従業員が副業先で伝えたり活かしたりすることがあれば、企業の利益を大きく損なう可能性もあります。
悪意を持った情報漏洩は問題外ですが、気付かないうちに漏洩してしまうことも。副業を解禁するなら、情報漏洩に対するリスクマネジメントを徹底する必要があります。
労務管理が難しくなる
労務管理が難しくなるのも、企業にとって大きなデメリットでしょう。企業側は従業員の健康を維持するために労働時間を把握しなければなりません。もし従業員が副業した場合、どのくらいの時間を割いているのか確認する必要があるでしょう。
労働時間の合計によっては割増賃金を支払う義務が生じますし、労災保険の管理や計算も複雑になります。管理フローを明確にしておかなければ、後々トラブルに発展する可能性が高くなるでしょう。
実際に副業を許可している企業の事例4選
副業を許可する企業は増えています。ここでは実際に許可している企業の事例を4社ピックアップしました。
- 富士通株式会社
- サイボウズ株式会社
- ヤフー株式会社
- ロート製薬株式会社
それぞれの特徴を解説します。
富士通株式会社
IT大手の富士通株式会社(以下:富士通)では、申請書を提出することで副業を許可しています。大日本印刷株式会社やパーソルキャリア株式会社などと共同で、副業マッチングサービスの提供を行うなどの取り組みも。柔軟な働き方の実現を目指して、副業に積極的な姿勢が感じられます。
サイボウズ株式会社
サイボウズ株式会社(以下:サイボウズ)では「100人いれば100通りの働き方ができる会社」を宣言し、自由な働き方を認めています。
かつては年間離職率が28%にも達していたサイボウズでしたが、社員が働きたいように働いてもらう仕組みをつくることにより、4%まで減少しました。
ヤフー株式会社
ヤフー株式会社(以下:ヤフー)でも、事前申請すれば副業が可能です。「世の中を驚かせるサービスづくりには、自由な発想を生み出すための働き方がとても重要」だと考え、コアタイムなしのフレックスタイム制の他にも「どこでもオフィス」という、場所を選ばずどこでも仕事ができる制度を取り入れています。これにより従業員は時間や場所を自由に選んで仕事することが可能です。
また2020年には、新たな人材採用を視野に入れた副業人材を募集する制度も始めています。開始後は、約100人の採用枠に4,500人以上の応募が殺到したそうです。
ロート製薬株式会社
ロート製薬株式会社(以下:ロート製薬)では、2016年2月に週末副業を認める「社外チャレンジワーク」と、部門の枠を超えて他部署でも従事する「社内ダブルジョブ」を認めています。
創業家の4代目、ロート製薬の会長である山田氏は「会社は道具だから、社員は自由に活用してくれたらいいと思う。そうすればアウトプットも出ると思う」と話しています。
企業が副業解禁を成功させるためのポイント
副業解禁に成功すれば働く側はもちろん、企業側にも大きなメリットとなるでしょう。ここでは成功させるためのポイントを2つ解説します。参考にしてください。
副業・兼業の促進に関するガイドライン|厚生労働省
条件を明確に設定する
副業解禁にあたって、条件を明確に設定することが大切です。条件なしに自由な副業を認めてしまうと、情報漏洩や本業の業務効率低下を招く恐れがあります。
本業に支障が出るような内容であれば、却下する仕組みも大切です。あくまでも優先は本業、体調管理はしっかりするなど条件を従業員と共有しておけば、トラブルを事前に防げるでしょう。
労働時間を把握できる体制を整える
従業員の労働時間の把握、健康管理のためにも、事前の申請を必須とするのがよいでしょう。本業も副業も忙しくてオーバーワークになった場合、体調に支障をきたす可能性もあります。結果的に本業を休みがちになったり、ミスが多くなったりすれば元も子もありません。副業に取り組む時間を1週間ごとに提出させるなど、従業員の労働時間を管理できる仕組みを整えることが大切です。
まとめ
副業を許可することによる企業側のメリットとデメリット、実例や成功ポイントを解説しました。副業ブームといわれる現代では、副業に興味を持つ人が増加傾向にあります。大手やベンチャー関係なく、副業を認める企業も増えてきました。今後も増えていくと考えられるでしょう。
認めることによって、従業員の成長や定着率の向上、事業拡大のチャンスなどたくさんのメリットがありますが、仕組みを整えてから解禁しないと情報漏洩リスクや従業員の体調不良など、思わぬトラブルが発生するリスクもあります。
副業を解禁する際は働く側と企業側、双方にとってメリットが得られるような仕組みを整えてからにしましょう。さまざまな企業の実例を参考にしてみると、イメージが湧きやすくなりますよ。
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