確定申告はいくらから?副業所得が20万円以下なら確定申告は不要!申告のルールと例外パターンを解説

正社員のような給与所得者は、勤め先で年末調整を行うので確定申告は不要です。しかし、副業をしている人は確定申告が必要になることがあります。「副業所得が20万円以下なら、確定申告は原則不要」など、確定申告のさまざまなルールを正しく理解しておきましょう。

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そもそも副業とは?

「副業」とは企業に雇用されている人が、本業の勤め先企業以外の法人や事業者から収入を得ることです。本業と副業の2つ以上の仕事を掛け持ちするため、副業は「ダブルワーク」とも呼ばれます。

近年、働き方改革の推進や新型コロナウイルス感染拡大の影響でおうち時間が増えたために、副業を始めたいと考える人が増えています。テレワークやリモートワークが普及し、自宅から仕事ができるようになったのも副業のハードルを下げた要因でしょう。

さらに、2018年の副業元年以降、副業を解禁する企業は増加しています。企業によっては誰でも好きな副業をスタートしやすい環境が整いつつあります。

副業を始めると業務量が増えるため、肉体的な負担が大きくなります。一方で、収入が増えるのが副業の大きな魅力です。

「生活費の足しにしたい」「お小遣い稼ぎをしたい」「未経験の仕事に挑戦したい」など、副業を始める理由は人それぞれですよね。稼ぎたい金額や興味のある業界などを手掛かりに、自分が無理なく続けられる副業を見つけましょう。

おすすめコラム:ダブルワークは副業と違うの?メリットや注意したいポイントも解説

副業は確定申告が必要

本業の勤め先企業で「副業OK」とされているからといって、下調べもせずに副業をスタートさせるのはリスクがあります。なぜなら、副業収入の確定申告を正確に行わなければ「脱税」となる可能性があるからです。

確定申告とは、1年間の所得金額を計算し、定められた期限までに税務署に申告することを指します。税務署は、申告された所得金額をもとに所得税を算出したり、払いすぎた税金を還付したりします。

副業をする人は、「本業の勤め先企業で年末調整しているから大丈夫」と思わずに、自分の副業の形態や収入額の場合には確定申告が必要になるかどうか、しっかり確認しておくと安心です。

日本の「申告納税制度」

日本では「申告納税制度」が導入されています。多くの人にとって「申告納税制度」は耳慣れない言葉かもしれません。

「申告納税制度」とは、納税の義務がある国民が自ら所得を算出して申告し、その額をもとに規定の税額を納めるとする制度です。所得税は、申告納税制度の対象となる税金なので、確定申告を納税者自らが行って自己申告します。

日本の税金の種類はさまざまです。消費税のように使った金額に対して、一律の税率が設定されている税金もあれば、所得税のように所得総額によって課税率が変わる税金もあります。

税金によっては、各種控除や免除、期間限定の特例などが定められている場合があります。年度によって特例があったり制度が変わったりするときもあるので注意が必要です。

例えば、2020年(令和2年分)の確定申告は、新型コロナウイルスの影響を受けて申告期限が延長されました。税金に関する情報は、国税庁のホームページなどで確認しておくとよいでしょう。

確定申告の必要性の有無は副業規模による

少しでも収入があるなら、国に申告して相応の税金を納めるのが国民の義務です。本業で企業に雇用されている場合、勤め先企業が労働者に代わって収入の申告と納税を行います。

一方、個人で事業をしていたり企業に雇用されずに副業収入を得ていたりすると、原則として確定申告をしなければなりません。

しかし、副業所得が20万円以下の場合は課税金額が少ないため、確定申告が不要とされています。月あたり1万5000円程度の収入であれば、確定申告は不要だと覚えておきましょう。小規模な副業なら確定申告をしなくていいので、手間がかかりませんね。

副業所得20万円以下の場合の確定申告

副業での所得総額が年間で20万円を超えない場合、確定申告は不要ですが、どのように判断するのかを解説します。「所得」とは、「収入」から「経費」を差し引いた金額を指します。

「収入」とは副業のクライアント企業から受け取った金額であり、「経費」は副業の業務遂行のために使った金額です。「所得=収入」ではない点に注意しましょう。所得税の算出基準となるのは、収入額合計ではなく所得額合計である点がポイントです。

初めて確定申告をするときは、何が経費になるのか判断しにくいかもしれません。経費にしていいか迷ったら「副業のために必要だったかどうか」を考えてみましょう。

例えば、副業として在宅でバックオフィス業務を請け負う人は、普段の洋服代は経費にできません。在宅業務のバックオフィス業務に服の購入が必要ないためです。

一方で、YouTubeの動画配信者ならどうでしょうか。動画撮影のための「衣装代」としてなら、洋服代が経費として計上できます。副業の内容によって経費になるものが変わるため、慎重に検討しましょう。

もし、動画配信による広告収入が30万円で、カメラなどの機材購入費および動画編集スキルを学ぶセミナー参加費などの経費が15万円だと、確定申告は必要ありません。なぜなら「収入30万円-経費15万円=所得15万円」となり、所得額が20万円以下となるからです。

給与所得に経費は認められない

業務遂行のために使った金額は、経費として計上できます。しかし必要経費が認められるのは事業所得や雑所得などの限られた所得だけです。

副業としてアルバイトやパートタイム勤務をしている場合は、給与所得に該当するため経費が認められない点は注意しましょう。具体的な例としては、副業でパートをしている人が、副業の業務知識を増やそうと個人的にオンラインセミナーを受講したときの受講費は経費にできません。

副業による所得が20万以下でも確定申告をしたほうがよいケース

副業による所得が20万以下でも確定申告をしたほうがよいケース

確定申告は副業所得が20万円以下なら必要ありません。確定申告をしないのは手間がかからないのでメリットが大きいと感じますよね。

しかし、確定申告が不要とされる人でも、場合によっては確定申告をすることで税金の還付を受けられます。

  • 所得税を納めすぎている
  • 不動産経営で赤字が生じた
  • 医療費控除や住宅ローン控除などを受ける

これら3つのケースでは、所得が20万円以下でも確定申告をしたほうがよいでしょう。

所得税を納めすぎているとき

副業の収入が源泉徴収の対象となっているとき、確定申告で税金の還付が受けられるかもしれません。「源泉徴収」とは、企業が収入の支払い時にあらかじめ所得税を支払う仕組みです。

本業で企業に雇用されている人なら、勤め先企業から源泉徴収の詳細が記載された「源泉徴収票」を受け取るでしょう。副業収入を得ている人は、副業の依頼主である企業が源泉徴収をしている可能性があります。源泉徴収を二重にされていながら確定申告をしないと、すでに支払っている所得税分を追加で支払う事態になりかねません。損をしないためにも、副業収入が源泉徴収の対象かをしっかり確認しましょう。払いすぎた所得税は、確定申告を行うことで管轄の税務署から還付されます。

給与所得以外の収入も源泉徴収の対象となる場合があるので、個人で事業をしている人も源泉徴収の有無の確認をおすすめします。源泉徴収の対象としては「セミナー講演料」「記事の原稿料」「スポーツ選手への報酬」「競馬の賞金」などが挙げられます。

不動産経営で赤字が生じた

不動産経営とは、アパートやマンションなどの不動産を所有する人が家賃収入を得ることです。副業として不動産経営をしている人が赤字になったとき、確定申告をすることで所得税の還付を受けられる可能性があります。

不動産経営によって得た「不動産所得」は、給与所得と損益通算ができます。損益通算とは、同一年内の利益と損失を相殺できる仕組みです。

給与所得と不動産経営による赤字を相殺できる損益通算により、本業の勤め先企業で年末調整を受けていても所得税の還付を受けられるかもしれません。還付されるかどうかは状況によって個々に判断されます。副業として不動産経営をしている人は、赤字になったときの対処方法として知っておくと安心ですね。

 医療費控除や住宅ローン控除などを受ける

医療費控除や住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)など、一部の控除は年末調整の対象となりません。年末調整の対象とならない所得控除を受けたい場合は、個人で確定申告をする必要があります。

昨今注目を集めている「ふるさと納税(寄附金控除)」も、年末調整の対象にならない所得控除です。申告しなくてもペナルティはありませんが、控除を受けられなくなるため個人が支払う金額が増えてしまいます。

確定申告で算出するのは所得税だけじゃない! 

副業による所得合計が年間20万円以下の人は、原則として確定申告する必要はありません。確定申告をしないなら「納税する必要がない」と気が楽になる人もいるのではないでしょうか。

しかし、確定申告で届け出る1年間の所得額をもとに算出される税金は、所得税だけではありません。「住民税」も所得額に応じて算出される税金です。

副業所得が20万円以下のとき、確定申告をする必要はありませんが、住民税納税のための申告は必要なので申告もれがないよう注意しましょう。

所得税と住民税の違いについて詳しく解説します。

所得税

「所得税」は国に支払うべき国税です。税務署が管理していて、企業に雇用されていない人の所得税は確定申告書の内容をもとに計算されます。所得税の計算方法は「所得税=所得金額×税率」です。

所得税額は、課税対象となる所得額に応じた税率をかけて計算されます。所得総額が増えるほど税率が高くなるため、納める所得税額も高くなります。

住民税

地方税の一種である「住民税」は、住んでいる市区町村に支払う税金です。本来なら確定申告の情報が各市区町村に送られて、自治体から個人へ住民税が通知されます。

しかし、副業所得が20万円以下だからと確定申告をしないと、市区町村が個人の所得額を知ることができません。確定申告をしない場合は、脱税とならないためにも納税者が自分から所得額を市区町村に申告し、住民税を支払わなければならないのです。

住民税は、「所得割」「均等割」「利子割」「配当割」「株式等譲渡所得割」の5つの要素から計算できます。計算式は「住民税=所得割+均等割+利子割+配当割+株式等譲渡所得割」です。

所得割とは、所得から所得控除を差し引いた金額に対して10%の税率をかけて計算されます。所得割の計算では、配当控除や寄附金税額控除などの控除も控除項目に含められます。

均等割とは、所得金額によらず一律で加算される税額です。均等割の金額は都道府県や市区町村によって異なります。はっきりと金額を知りたいときは、住んでいる市区町村のホームページなどを確認すると確実ですよ。

利子割や配当割、株式等譲渡所得割などの特定所得があると、特定所得の金額を加算した金額から住民税が算出されます。

住民税の申告をしないとどうなる? 

確定申告をしないと市区町村から住民税額が通知されないため、住民税は納付し忘れが起きやすい税金です。税金の未納は「忘れていた」では済みません。住民税を期日までに申告しなかった場合、本来支払うべき住民税額にプラスして延滞税を徴収される可能性があります。

住民税の延滞税は、本来支払うべき住民税に延滞税率をかけて算出できます。延滞税率は、納期限の翌日から納期限後1か月までは年7.3%、2か月目以降は年14.6%が上限です。なお、特例措置として税率が変わる場合があります。いずれにせよ、延滞している日数に応じて税率が高くなるため、延滞税の納付書や督促状が届いた際にはできるだけ早く納税することをおすすめします。

副業にかかわる3つの所得

副業の所得が20万円以下なら確定申告をする必要がありません。所得金額とは、収入額から必要経費を差し引いた金額を指します。

副業所得の確定申告をする際に注意したいのが、所得の種類です。所得は10種類(給与、事業、利子、配当、譲渡、不動産、一時、退職、山林、雑所得)に分類されます。所得の違いを理解すると、税制上のメリットを享受できたりトラブルを回避できたりしますよ。

10種類ある所得一覧のなかでも、副業の確定申告で特に重要なのが「給与」「事業」「雑所得」の3つの所得です。3つの所得の詳細を解説します。

給与所得

「給与所得」とは、会社員やパートタイム、アルバイトとして企業に勤める人が受け取った金額をもとに計算されます。給与所得として働き手が受け取るお金には、毎月支払われる給与や賃金のほか、賞与やインセンティブ支給などがあります。勤務先から受け取ったお金から、給与所得控除額を差し引いた金額が「給与所得」です。

給与所得では経費が認められません。給与所得の場合は経費計上できないのが他との違いですが、給与収入からは給与所得控除額を差し引けます。

給与所得控除額は、給与収入の合計額から算出します。もし、本業で企業の正社員として勤めている人が副業としてパート勤務をした場合、2つの事業所の収入を合算した金額をもとに給与所得控除額が計算されます。

事業所得

「事業所得」とは、事業を営んだ結果として得た収入から必要経費を差し引いた金額を指します。農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの業種の所得は、事業所得に該当するケースが多いでしょう。個人事業主やフリーランスが個人で事業を営む場合の所得も、事業所得となります。

事業所得の確定申告は、青色申告と白色申告という2つの方式から選択できます。また、事業所得の確定申告は、赤字額の繰り越しや赤字額と給与所得を相殺できるなどの特徴があります。確定申告をする際にメリットを感じやすい所得といえるでしょう。

副業で得た所得を「事業所得」として確定申告するには、事業が成立していると税務署に認められる必要があります。収入や事業の規模、副業にかけている時間や人員数などの条件によっては、事業所得ではなく雑所得だとみなされる可能性があるため注意しましょう。

雑所得

全部で10種類ある所得のうち、雑所得以外の9種類に当てはまらなかった所得はすべて「雑所得」に分類されます。例えば、公的年金や原稿料および印税、講演料、FXでの収入などが該当します。雑所得は、収入額合計から必要経費を差し引いて計算できます。

副業をしている人の多くが、「本業が終わってから寝るまでの数時間だけ」「本業が休みの日だけ」副業の業務を進めているのではないでしょうか。本業に支障をきたさないようにすると、副業にかける時間が短くなってしまうものです。

副業の規模が小さい場合や副業にかける時間が短い場合は、事業所得ではなく雑所得に分類されるケースが多くあります。自分の副業所得がどの所得に該当するか判断しにくいなら、管轄の税務署に相談すると安心です。

帳簿保存の有無で所得分類が変わる

副業収入の所得分類は、事業内容や規模による分類方法が明確化されていません。判断基準の1つとして、国税庁は副業収入について「帳簿保存をしていれば事業所得とする」としています。副業をする上で発行した請求書、経費計上のためのレシートや領収書などの帳簿書類があれば、事業所得として確定申告が可能です。一方、帳簿保存をしておかないと、事業所得ではなく雑所得として確定申告することが求められる可能性があります。

副業でも経費計上してOK

副業でも経費計上してOK

本業で給与所得がある人が副業として個人事業を営むとき、多くの人の副業所得が「事業所得」か「雑所得」に分類されます。事業所得と雑所得のどちらも、収入額から必要経費を差し引いた金額を所得額として確定申告できます。そのため、副業がどちらに分類されるかどうかにはこだわらず、経費計上の準備をしておきましょう。

経費として計上できるものは、副業の業務内容によって異なります。副業と関係のない費用を経費として経理処理しないように注意しましょう。万が一、税務調査が入ったときに証拠を提出できるよう、事業運営のために支払ったとわかる請求書や領収書を保管することが大切です。

保管する書類は、日付や購入内容、店舗名、金額などが網羅的に記載されているものがよいでしょう。クレジットカードの利用明細は項目が省略されていることが多く、経費の証拠として認められない場合があるので注意が必要です。

家賃や水道光熱費は経費計上できるか

テレワークやリモートワークなど在宅勤務が普及し、自宅を仕事場として副業を始める人が増えています。自宅を仕事場として副業をしているとき、家賃や水道光熱費を経費として申告していいのか迷いますよね。

仕事場が自宅なら「家事関連費」として、家賃や水道光熱費、インターネット回線費などを経費として計上できます。確定申告では「家事按分」をして、プライベートと仕事で使う比率から経費にできる金額を算出します。

具体例として、賃貸物件に住んでいる人が家賃を家事按分するときの考え方を紹介しましょう。まず、借りている部屋全体の床面積と、仕事で利用しているスペースの床面積を測ります。その後、部屋全体の床面積に対して仕事用で利用している床面積の割合がどのくらいなのかを計算しましょう。賃貸物件全体の床面積が60平方メートルで、仕事に6畳程(11平方メートル)の部屋を使っているなら、家事按分は18%です。月額の賃料に18%をかけると、経費にできる金額が明らかになります。

家事按分する割合は個人の判断に委ねられますが、客観的に納得できる理由がなければなりません。例えば、24時間のうち合計2時間しか副業をしていないときに、光熱費の50%を経費として処理するのは誤りです。家事按分はできるだけ正確に行って、万が一の税務調査に備えておきましょう。

確定申告には2種類ある

確定申告には2種類ある

本業で給与所得を得ていて確定申告をした経験がないと、どのように確定申告を始めればよいかわかりませんよね。確定申告には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。両者の違いやそれぞれの特徴を解説します。

青色申告とは

青色申告では、複式簿記という複雑な形式で帳簿に記帳するのが特徴です。事業にかかわる支出と収入を一つひとつ丁寧に記帳しなければならず、手間がかかります。一方で、お金の動きが細かく確認できるため、信頼性が高い方法です。

青色申告による確定申告をすると、白色申告よりも税法上で優遇されます。優遇措置を受けるに値するか確認するため、青色申告をするには税務署から承認を得なければなりません。青色申告を利用したい場合は、「所得税の青色申告承認申請書」を提出しましょう。税務署から承認されれば、誰でも青色申告を利用可能です。

「手間をかけてまで青色申告を選ぶメリットがあるのか」と疑問を持つ人もいるでしょう。青色申告を利用することで得られるメリットは複数あります。

  • 青色申告特別控除を受けられる
  • 家族への給与を経費計上できる
  • 貸倒引当金を経費計上できる
  • 赤字の繰り越しができる
  • 減価償却の特例を受けられる

青色申告を利用すると得られる5つのメリットを紹介します。

青色申告特別控除を受けられる

青色申告をすると必要になる複式簿記による記帳では、賃借対照表と損益計算書を作成します。収入と支出を一つずつ詳しく記載した賃借対照表と損益計算書を、確定申告書と併せて税務署に提出すると、最大で65万円の青色申告特別控除を受けられます。

65万円の控除を受けるには、いくつかの条件をクリアしなければなりません。もともと控除額の上限は55万円でした。e-Taxソフトの開発でオンラインから確定申告ができる電子申告が始まっており、電子申告した場合に控除額の上限が65万円まで引き上げられます。電子申告を行わない場合は従来通りに55万円の控除、また、対象書類を提出しない場合には10万円の控除が受けられます。

控除額が大きいほど、税金の対象となる所得が少なくなります。青色申告特別控除を受けられると、大きな節税効果が得られるでしょう。

家族への給与を経費計上できる

個人事業主の事業を、個人事業主の配偶者や子ども、同居している親族などの家族が手伝っている場合に、家族への給与が必要経費として認められます。家族への給与が経費として認められるのは、家族が15歳以上の「青色事業専従者」であるときに限られるため注意しましょう。青色事業専従者は、事業主の事業に6か月以上専従して労働の対価として給与を受け取る人を指します。

家族が青色事業専従者として副業を手伝ってくれるなら、「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出しましょう。支払う予定の給与額が妥当であると税務署に認められれば、家族への給与を経費計上できるようになります。

貸倒引当金を経費計上できる

事業所得のある青色申告者は「貸倒引当金(かしだおれひきあてきん)」を経費にできます。「貸倒引当金」はあまり聞き慣れない言葉ですが、取引先が倒産して副業収入の支払いができなくなったときなどに備えて、事前に損失額を計上しておく引当金のことです。

売掛金や受取手形など、報酬の支払いが後払いになる仕組みを利用して取引をするとき、報酬が回収できなかったときのリスクヘッジとして貸倒引当金を経費にします。青色申告では、年末時点の貸金の帳簿価合計額の5.5%以下の金額が貸倒引当金として計上できます。

赤字の繰り越しができる

事業を営んでいると収支が赤字となるときがあります。事業所得や不動産所得で赤字がある場合、給与所得などの別種の所得と損益通算ができます。その他の所得で赤字を相殺する損益通算をしても赤字が残ったとき、青色申告者なら赤字の繰り越しが可能です。

繰り越せる期間は3年間までであり、繰り越せる金額は損益通算後に残った赤字である純損失のみとされています。前年も青色申告をしていれば、損失額を前年の所得金額に繰り戻すこともできるのはメリットでしょう。繰り戻しによって、所得税の還付を受けられる場合があります。

減価償却の特例を受けられる

固定資産の購入費用を、使用可能な期間をもとに分割して経費計上することが「減価償却」です。副業で使うパソコンや自動車など、10万円以上の固定資産は減価償却をする必要があります。どのくらいの期間で滅却するかは法定耐用年数」によって定められています。

例えば、20万円のパソコンの減価償却期間は4年間です。年に5万円ずつ、計4年かけて20万円の経費計上を行います。

しかし、白色申告では10~20万円未満のもの、青色申告なら30万円未満のものを減価償却せずに一括で経費計上できます。一括経費計上では、法定耐用年数にかかわらず3年かけて処理していきます。所得金額が少ないほど課税対象となる所得金額が減って税金額が少なくなるため、白色申告よりも青色申告のほうが節税に効果的です。

白色申告とは

青色申告を利用する必要がない場合や複式簿記による記帳が難しい場合は、青色申告より簡易的な白色申告を利用できます。白色申告は、青色申告の申請をしていない事業者向けの申告方法で、簡易的な帳簿を作成して申告します。

白色申告は、確定申告が完了するまでの手間がかからないのが大きなメリットです。一方、青色申告で受けられる税務上のメリットは享受できません。

事業規模や副業での収入総額にもよりますが、事業所得がある場合はできるだけ青色申告を利用することをおすすめします。近年は、簡単に帳簿データを作成できるオンライン会計ソフトやクラウドサービスが数多くリリースされているので、記帳が苦手でも青色申告をしやすくなっていますよ。

確定申告のやり方

副業をしている人が確定申告を行う場合、副業収入の所得金額と本業で得た給与所得を合算して確定申告書を作成します。確定申告をする手続き自体は、副業かどうかによらず同じものです。

確定申告で必要になる書類や細かい確定申告の分類は、一人ひとりの状況に合わせて判断されます。確定申告に関して不安があれば、気負わず税務署の担当窓口に問い合わせてみましょう。税務署に具体的な相談をすると、適切なサポートを受けられますよ。

確定申告書の受付期間

確定申告書は、1年間の所得額を計算して税務署に申告するための書類です。確定申告書を提出する期間はあらかじめ定められているため、期間内に確定申告を終わらせましょう。

確定申告書の受付期間は、例年2月16日から3月15日までです。休日や祝日と重なる場合は翌営業日が期日となります。社会情勢など、その時々の状況によって受付期間が変更される場合もあるため、確定申告書の受付期間は毎年確認することが大切です。

受付期間内に確定申告ができないと、ペナルティとして「加算税」や「延滞税」が課されるかもしれません。余計な出費になってしまうので、申告漏れや申告遅れには気をつけましょう。

確定申告で必要なもの

副業にはさまざまな種類があるため、雇用形態や契約形態によって所得の種類が変わります。所得の種類が違えば確定申告書の作成方法が変わるため、自分の副業がどの所得に該当するのかを確認しましょう。

  • 副業が給与所得の場合
  • 副業が雑所得の場合

よくある2つのケースを例に、確定申告で必要なものを紹介します。

副業が給与所得の場合

企業と雇用関係を結んで給与所得を得る副業の場合は、源泉徴収票の準備が必要です。正社員のような正規雇用者だけでなく、アルバイトやパートの非正規雇用者であっても、雇用契約を結んでいれば「給与」所得になるので注意しましょう。

源泉徴収票は給与を支払っている企業が発行するものです。もし勤め先企業から受け取っていない場合は、企業の担当部署へ依頼して発行してもらいしょう。

確定申告で用いる確定申告書は、給与所得者用の「確定申告書A」を使います。例外として、年末調整の対象外である所得控除を受ける場合には、「確定申告書B」を使って確定申告書を作成します。

副業で給与所得を得ている場合、税務署への提出が必要な書類は複数あるので過不足なく準備しましょう。一般的には、「確定申告書AまたはB」「源泉徴収票」「マイナンバーカード(または通知カード)のコピー」「身分証明書」の提出が求められます。

副業が雑所得の場合

雑所得は、1年間の収入合計額から経費総額を差し引いて計算できます。雑所得の確定申告では、経費の証明となる領収書の準備が欠かせません。確定申告の時期になって「領収書がない」と焦らないように、事前にしっかり準備しておくと安心ですね。本業で給与所得を得ているなら、本業の勤め先企業に依頼して源泉徴収票を発行してもらう必要があります。

確定申告の際は、基本的に「確定申告書A」を使います。年末調整で対応できない控除があれば、「確定申告書B」を使います。確定申告書の記入時に注意すべきは、所得の種類です。本業は「給与所得」、副業は「雑所得」と分けて記載しなければいけない点に気をつけましょう。

副業で雑所得を得ている場合の提出物は、「確定申告書AまたはB」「本業での源泉徴収票」「マイナンバーカード(または通知カード)のコピー」「身分証明書」です。副業の内容によって提出書類が増える場合もあります。

確定申告書の提出方法

確定申告書が作成できたら、定められた期間内に確定申告を行います。確定申告書の提出方法は複数あるため、自分にとってやりやすく都合の良い方法を選びましょう。

一般的な提出方法は、税務署の窓口へ持参することです。確定申告書とその他必要書類を持って税務署へ行き、担当者の確認を得ながら確定申告を行います。確定申告の受付期間中は、税務署がとても混雑します。窓口で確定申告をするなら、混雑する前の早い時間を狙うとスムーズですよ。

税務署窓口で確定申告を行う以外の確定申告書の提出方法には、郵送による申告と電子申告があります。電子申告は、インターネット環境さえあれば自宅から手軽に確定申告ができるのでおすすめです。

スマホやネットからも確定申告ができる?

郵送や税務署の窓口に直接書類を提出しなくても、確定申告は行えます。国が提供している「e-Taxソフト」を使った電子申告をすれば、インターネット環境がある人なら誰でもどこからでも確定申告が可能です。

電子申告は、スマートフォンでも可能です。画面の指示通りに事前に計算した数字を入力するだけで、簡単に確定申告書が作成できるのが電子申告の魅力です。確定申告の経験が少ない人でも直感的に操作できるようになっているので、手間取ることは少ないでしょう。

それでも不安のある人は、初年度は窓口に持参し、確定申告の書類に慣れた次年度からは「e-Taxソフト」を活用するとよいでしょう。

確定申告のケース別取り扱い方

確定申告のケース別取り扱い方

副業による所得が20万円以下なら確定申告する必要がありませんが、確定申告の必要性や取り扱い方は一人ひとりの状況によって変わります。さまざまなケースの働き方を例に、確定申告の取り扱い方を紹介します。

  • 副業としてアルバイトをしているケース
  • 不用品販売をしたケース
  • ハンドメイド作品をECサイトで販売しているケース
  • 副業として不動産所得を得ているケース
  • 副業として株式投資を始めたケース

副業としてアルバイトをしているケース

コンビニエンスストアでアルバイトをしている人がいたとします。週に3日、本業の就業後2時間をアルバイトに充てる場合はどのように所得が計算されるのでしょうか。

コンビニ業務が時給1500円だと、1日の給与額は「1500円×2時間」なので「3000円」です。就業日数が週3日だと「6000×3日」なので「9000円」が1週間の所得となります。

このように計算すると、1か月の給与所得額は3万6000円で、12か月で43万2000円になります。給与所得は経費計上が認められないため、収入がそのまま所得となります。43万2000円は、確定申告が不要となる20万円を超えているため、確定申告が必要です。

不用品販売をしたケース

メルカリやヤフーオークションといったフリーマーケットアプリやオークションサイトが一般的になり、「不用品販売を副業にしたい」と思う人が増えています。フリマアプリなどで生活用品を売った場合、売却金に税金は課せられないため確定申告は不要です。

ただし、フリマアプリ等を使って営業利益を得ようとする場合の売上金は、課税対象となる可能性があります。利益を得ることを目的に仕入れをして、フリマアプリ経由で仕入額より高い値段で販売すると、営利目的だと判断されて確定申告が必要になります。

ハンドメイド作品をECサイトで販売しているケース

フリマアプリの台頭やインターネットショップ開設が手軽になり、ハンドメイド作品を販売する人が増えています。ハンドメイドは本業をしながらでもスキマ時間や夜間など、自分の都合の良い時間に進められるのが魅力ですよね。

ハンドメイド作品の販売は、趣味の範囲であっても1年間の所得が20万円以上なら確定申告が必要です。事業所得や雑所得に分類される場合が多いので、ハンドメイド作品の材料費や工賃を経費として計上しましょう。

例えば、アクセサリー作家が年間50万円の収入を得た場合、確定申告の必要性は経費の総額によって決まります。経費になるのは、アクセサリーの材料費、購入者へ発送する際の梱包資材費、ECサイトの月額利用料などです。経費が30万円以上なら、所得額が20万円以下になるので確定申告をする必要はありません。

副業として不動産所得を得ているケース

不動産の所有者が不動産所得を得ているとき、不動産の規模によって事業所得になるかどうかが決まります。家屋の貸付がおおむね5棟以上か、マンションやアパートの貸付が10室以上の場合は、事業として認められるので青色申告ができます。

副業として株式投資を始めたケース

本業の収入を利用して、資産運用をする人が増加しています。株式投資では、「源泉徴収あり」に設定した特定口座を使うことで、確定申告を不要にすることができます。

株式投資は投資額や分散方法にもよりますが、ハイリスクハイリターンな副業です。万が一損失が出た場合に損失の繰り越しができるように、確定申告をしておくと安心ですよ。

確定申告をすると副業がばれる? 

副業をしていると「本業の勤め先企業にばれるのでは」と不安になるかもしれません。もし、本業の勤め先企業が副業を禁止している場合は、副業がばれると就業規則違反として処分を受けるリスクもあります。副業をしていることが周囲にばれないようにする絶対の方法はありませんが、確定申告をする際の工夫でばれるリスクを少なくできます。

例えば、副業で給与所得があると、副業先の企業が年末調整や雇用保険への加入処理をするタイミングなどで、本業の勤め先企業に副業の事実が伝わる可能性が高いでしょう。副業先の企業に状況を正しく伝え、二重申告・二重加入とならないよう手続きについて協力してもらいましょう。

また、副業がばれる理由として、住民税の金額が変わることが挙げられます。住民税は所得総額をもとに算出され、所得が多いほど住民税が高くなります。本業の勤め先企業が、副業の収入によって不自然に高くなった住民税に違和感を覚えることで、副業が発覚するケースがあります。

住民税額による副業ばれ予防には、確定申告の際に普通徴収で住民税を支払うように申告しておきましょう。企業が従業員に代わって住民税を支払う特別徴収を利用しなければ、副業しているとばれにくくなります。

本業の勤め先企業の就業規則には、「副業OK」「副業可能な業種の詳細条件」などが記載されているかもしれません。副業を始める前に就業規則を確認し、可能であれば本業の勤め先企業に副業の許可を得ておくと、副業を始めるリスクや不安を軽減できます。

確定申告をしなかったら罰則が科せられる

確定申告は手間がかかるので「面倒だ」と感じる人が多いのではないでしょうか。「副業だから」「少額だから」といって確定申告が不要なわけではありません。少しでも収入がある場合は原則として確定申告が必要です。例外として、副業所得が20万円以下のとき、確定申告は不要とされています。

確定申告が必要かどうかは、働き方や就業時間、副業の業務内容など、さまざまな条件によって判断されます。副業をしているなら、自分が確定申告すべきかを税理士や税務署に確認しておくと安心できるでしょう。

確定申告が必要なのに申告しなかった場合は、所得税の無申告となり「脱税をした」とみなされます。故意ではなくても、「知らなかったから」「忘れていた」は通用しません。規定にもとづいた金額が追加徴収をされたり、差し押さえられたりしてしまうので注意しましょう。

本来の所得金額より低い金額で申告するなど虚偽の確定申告を行うと、「加算税」が課せられます。無申告や不納付も加算税の対象です。加算税は、種類によって加算率が異なりますが、40%近く加算される場合もあります。所得金額によっては大きな出費となるので、できれば避けたいですよね。

また、定められた期日までに確定申告をしないと「延滞税」が課せられる可能性があります。延滞した期間に応じて延滞税率は変わり、延滞期間が長くなるほど追加徴収額が増加します。確定申告によって計算された所得税と住民税の両方を支払わないと、それぞれに対して延滞税が課せられるかもしれません。

確定申告の無申告による脱税は、社会的信用を失うきっかけになります。悪質なケースだと判断されれば、行政サービスが受けられなくなったり社会保険料などの減免が受けられなくなったりします。自動車や住宅購入時にローンを組めない可能性もあるでしょう。

税金の未納に気づいたら速やかに納付処理を行うことが大切です。

まとめ

副業をしている人のなかには、「本業で年末調整をしているから確定申告は不要では」と思いっている人もいるかもしれません。「副業による収入が少ないから」と確定申告はしないという人もいるでしょう。副業であっても収入がある人は、確定申告をするのが原則であり、正しく納税を行うのが国民の義務です。

ただし、副業所得が年間20万円以下になる場合は、課税金額が少ないため確定申告が不要とされています。確定申告をすると所得税だけでなく住民税の算出もされますが、確定申告をしないと住民税がわからないままになってしまいます。副業所得が20万円以下の場合、住民税の申告は確定申告と別に行わなければなりません。

確定申告が不要な場合でも、医療費控除や住宅ローン控除などの所得控除を受けるときや還付申告する場合には確定申告を行いましょう。控除のための確定申告は実施しなくてもペナルティはありませんが、払いすぎた税金が払い戻しされない可能性があるため実質的には損をしてしまいます。

自分が確定申告をするべきか判断できないときは、税理士や管轄の税務署の担当者に相談してみましょう。個々の状況に合わせたアドバイスを受けられるので、加算税や延滞税の徴収対象となるリスクを避けられますよ。

 

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