ダブルワークを始めると収入が増える一方で、いろいろと分からないことも出てきます。その1つが雇用保険。雇用されている場合は加入しているのが一般的ですが、副業先の雇用保険はどうなるのか不安な人もいるでしょう。
今回はダブルワークする場合の、雇用保険加入について解説します。加入条件の他、ダブルワークならではの注意点も解説するので、これから副業を始める人はぜひ参考にしてください。
働き方が多様化する現在、保険についても会社に任せきりにせず、自分自身が正しい知識を身につけることが大切です。記事の後半で社会保険についても解説するので、トータルで理解しておきましょう。
雇用保険(失業保険)の加入条件を知っておこう
まずは雇用保険(失業保険)の加入条件を知っておきましょう。雇用保険は労働者なら誰でも加入できるわけではなく、雇用期間や労働時間で加入が定められています。
正社員として雇用契約を結んでいる場合は問題なく条件をクリアできますが、パートや派遣、あるいはダブルワークの場合はどうでしょうか。
パートや派遣の雇用保険
雇用保険の加入条件は以下の2つです。
- 週20時間以上の勤務
- 31日以上の雇用見込み
これらの条件を満たせば、パートや派遣であっても雇用保険に加入できます。31日以上の雇用見込みは若干曖昧な表現で、自分は権利を主張していいのか悩むかもしれません。例えば更新の規定がない30日未満の雇用契約であっても、過去に同じ契約で31日以上雇用された労働者がいた場合は、雇用保険の加入対象となります。
このように雇用保険の対象者は、かなり範囲が広くなります。31日以上雇用される可能性が少しでもある場合は、雇用保険の加入について勤務先に相談するようにしましょう。
ダブルワークの雇用保険
2つの条件を満たせば原則加入できる雇用保険ですが、ダブルワークをしている場合は例外です。複数の会社と雇用契約を結んでいる場合、雇用保険に加入できるのは主たる収入源となる1社のみとなります。たとえ副業先の会社で2つの条件を満たしていても、雇用保険は本業の企業でしか入れないので注意しましょう。
なお新しく副業を始める場合、副業先に何も申告しなくても間違って2つの会社で雇用保険に加入してしまう心配はありません。すでに本業で雇用保険に入っていれば、もし副業先が雇用保険の加入を申請しても、役所が拒否するシステムとなっています。
不正受給について(事例等)|大阪労働局
ダブルワーク時の雇用保険(失業保険)で気をつけること
ダブルワークで気をつけたいのは、失業保険(失業手当)の不正受給です。必要な申告を怠ったために不正に失業手当を受給してしまうと、受給した金額の3倍以上のペナルティを課される可能性があります。
本業を離職して失業手当を受給している場合、ダブルワークの就業時間と収入額を必ずハローワークに申告しましょう。1日4時間以上仕事をした日に関しては、失業状態ではないと見なされて失業手当は受け取れません。4時間未満の日でも、収入額に応じて失業手当が減額されます。
また本業を離職してハローワークに離職票を提出したあとは、通算7日間の待機期間が設けられます。このあいだに労働者が「就業の意欲と能力があるにもかかわらず、職に就くことができない状態」と見なされて、はじめて失業状態が認定されるのです。つまり待機期間中にダブルワークの仕事をしてしまうと、失業状態ではないと判断されて、その後は失業手当が支給されないので注意しましょう。
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ダブルワーク時の社会保険も知っておこう
企業で加入するのは雇用保険だけではありません。ここではダブルワークする場合の、社会保険の考え方を解説します。普段は保険のことをすべて会社まかせにしている人も、ダブルワークを始める機会に社会保険のシステムをよく理解しておきましょう。
ダブルワーク時の社会保険
雇用保険は1つの企業でしか加入できません。しかし社会保険は条件を満たせば、両方の企業で加入する必要があります。加入条件は以下のとおりです。
- 週20時間以上の勤務
- 年収106万円以上
- 1年以上の雇用が見込まれる
- 学生ではない
- 従業員数が501人以上(会社と従業員の合意があれば500人以下でも加入可能)
両方の企業で上記5つの条件を満たしていれば、2つの企業から得る収入を合算して社会保険料を決定します。それぞれの企業から支払われる給料の額に応じて社会保険料の負担割合を決め、給料から天引きされるシステムです。
副業先でも社会保険に加入することになったとき、最初の手続きは自分で行います。条件を満たした日から10日以内に年金事務所に必要書類を提出しなくてはならないので、忘れないようにしましょう。
育児休業中に他社で働いた場合
育児休業中の人にとって気になるのは、休業中に他社で仕事をしたら、育児給付金の支給はどうなるかではないでしょうか。育児休業中に仕事をした日数が10日以下、時間に換算して80時間以下であれば、勤務は臨時のものとみなされます。育児休業自体は継続していると判断され、給付金の支給対象です。ダブルワークによって育児休業中にこの勤務時間を超えてしまうと、支給対象外となるので注意しましょう。
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まとめ
今回はダブルワークする場合の、雇用保険や社会保険の加入について解説しました。ダブルワークしていても雇用保険の加入は1社のみ、社会保険は条件を満たせば両社で加入することになります。
きちんと制度を理解していないと、本業を離職したあとに意図せず失業給付を不正受給してしまったり、副業先で必要な社会保険加入手続きを怠ってしまうことになります。また本業の育児休業中に副業先で仕事をして、育児休業給付が受け取れなくなってしまうかもしれません。
働き方はますます多様化しています。そこで労働者本人が保険や税金について正しい知識を持ち、適切に行動することが求められるようになりました。これまで会社にまかせきりだった人も、自身で主体的に制度を利用するようにしましょう。
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