サラリーマンは、毎月の給与から自動的に所得税や住民税などが差し引かれています。そのため税金を納めている感覚がなく、節税意識が低い人もいるかもしれません。しかし、サラリーマンでも税金の仕組みを理解すれば節税できるのをご存じでしたか。
がんばって稼いだと思ったら、税金の負担も増えて手取り額が予想以上に増えないとなれば、働くモチベーションも下がってしまいますよね。そこで今回は、サラリーマンでもできる節税方法をまとめました。注意するポイントにも触れているので、ぜひ最後までご覧ください。
節税したいサラリーマンに副業がおすすめの理由
節税したいと考えているなら、副業がおすすめ。主な理由は次の2つです。
- 経費計上できるから
- 青色申告控除ができるから
詳しく解説します。
経費計上できるから
サラリーマンの場合、基本的に仕事で使う道具や制服は支給されます。しかし、効率や利便性アップのために自分で購入したものは負担してくれませんよね。
サラリーマンが個人事業主となって副業に取り組めば、経費を計上できるようになります。経費とは業務で必要な支出のこと。業務で使うパソコンやボールペンなどの備品、出張にかかる交通費や宿泊費も経費として計上できます。他にも自宅で副業するなら作業スペース分の家賃、インターネットを使うための通信費もすべて経費にできるのです。
これらの経費は、副業で稼いだ収入から差し引くことができるため節税につながります。経費として計上するには領収書が必要になるので、忘れずにもらいましょう。
関連記事:副業で使うパソコンは経費で落とせる?経費について詳しく解説
青色申告控除が使えるから
サラリーマンの場合、副業で稼いだ所得額が年間20万円を超えたら確定申告が必要です。確定申告には白色申告と青色申告の2種類がありますが、青色申告なら最大で65万円の特別控除を利用できます。
つまり、副業で稼いだ収入が年間65万円以下なら税金はかからないということ。本業で65万円多く稼げば、その分税金が引かれてしまいます。しかし、副業なら節税できる仕組みがあるため、手元に残るお金が増えるのです。
ただし、青色申告するためには開業届と青磯申告承認申請書を税務署に提出する必要があります。副業で節税効果を狙っている人は、副業開始と同時に提出しておきましょう。
サラリーマンができる!副業以外のおすすめ節税方法10選
節税やスキルアップのために副業に挑戦したいけれど、本業で禁止されている、あるいは忙しくて時間がないというサラリーマンもいるでしょう。しかし、節税をあきらめる必要はありません。ここでは副業以外の節税方法を10種類紹介します。
- ふるさと納税
- 扶養控除
- 医療費控除
- セルフメディケーション税制
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)
- NISA(少額投資非課税制度)
- 確定拠出年金(iDeCo)
- 特定支出控除
順番に解説します。できそうな節税対策があれば取り入れてみてはいかがでしょうか。
1.ふるさと納税
気軽にできる方法の一つがふるさと納税です。自分の好きな自治体に寄付することで、金額の一部が住民税から控除され、プラスして返礼品が受け取れます。本来支払うべき住民税の先払いをしている制度のため、正確に言えば節税効果はありません。しかし、自己負担2,000円で応援している自治体の特産品を受け取れるため、お得な制度といえるでしょう。
ふるさと納税できる金額は、年収や家族構成などによって異なります。控除の対象になるふるさと納税額は、総所得金額等の30%が上限です。上限額を超えて寄付した分は控除の対象とならないので注意してください。限度額をシミュレーションできるサイトもあるので、一度確認してみるとよいでしょう。
2.扶養控除
扶養控除は家族がいる場合に活用できる方法です。以下の要件をすべて満たして入れば、一定の控除を受けられます。
- 配偶者以外の親族がいる(子供や親など)
- 納税者と生計を一にしている
- 年間の合計所得金額が48万円以下(令和元年分以前は38万円以下)
- 青色事業専従者、事業専従者でない
参考:扶養控除|国税庁
また扶養控除額は以下の通りです。
区分 | 控除額 | |
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族 | 63万円 | |
老人扶養親族 | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
参考:扶養控除|国税庁
子供の場合は16歳以上(その年の12月31日現在)が対象です。15歳以下の場合は、児童手当を出す代わりに扶養控除が廃止となっています。
扶養控除の原則として同居が条件ですが、地方の大学に通っている子どもに仕送りをしているケースは対象です。また老人扶養親族は、その年の12月31日現在で年齢が70歳上の人を指しますが、老人ホームなどに入居している場合は同居とみなされず控除の対象となりません。病気などの理由で、1年以上入院している場合は同居として扱われます。
3.医療費控除
医療費控除は自分、あるいは生計を共にしている配偶者や親族の医療費が一定の金額を超えた場合に活用できます。対象となる要件は以下の通りです。
- 納税者が、自己または自己と生計を一にする配偶者やその他の親族のために支払った医療費
- その年の1月1日から12月31日までの間に支払った医療費
未払いの医療費がある場合、現実に支払った年の医療費控除の対象となるので注意しましょう。控除額は以下の計算式で算出できます。
【支払った医療費の合計額 - 保険金などで補てんされる金額 - 10万円※】
※その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額で計算
対象となる医療費は診療代や薬代の他、通院や入院時にかかったバス代なども対象になります。ただし、健康を増進する目的のサプリメントや、自家用車で通院した場合のガソリン代、自己都合による入院時のベッドの差額代など対象外となるものもあるので事前に確認しておきましょう。
4.セルフメディケーション税制
セルフメディケーション税制とは、医療費控除の特例です。ドラッグストアなど対面で購入できるスイッチOTC医薬品(医療用から転用された医薬品)を12,000円以上購入していれば、それを超える分の金額を控除できる仕組みです。限度額は88,000円。
すべての医薬品が対象ではなく、厚生労働省が指定したスイッチOTC医薬品のみです。対象となる商品には「セルフメディケーション税控除対象」の表示があるため、購入前に確認してみましょう。厚生労働省のホームページにも対象商品が記載されているので、併せてごらんください。
ちなみにセルフメディケーション税制を活用する場合、通常の医療費控除は使えなくなります。申請する場合は、どちらが自分にとって有効か考えたうえで選択しましょう。
5.生命保険料控除
生命保険料や介護保険料、個人年金保険料を支払っている場合に、一定の所得控除を受けられる制度が生命保険料控除です。控除額の上限は、契約時期によって異なります。
新契約の場合(2012年1月1日以後に締結した保険契約等)
年間の保険料等 | 控除額 |
20,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
20,000円~40,000円以下 | 支払保険料等×1/2+10,000円 |
40,000円~80,000円以下 | 支払保険料等×1/4+20,000円 |
80,000円~ | 一律40,000円 |
参照:生命保険料控除|国税庁
旧契約の場合(平成23年12月31日以前に締結した保険契約等)
年間の保険料等 | 控除額 |
25,000円以下 | 支払保険料等の全額 |
25,000円~50,000円以下 | 支払保険料等×1/2+12,500円 |
50,000円~100,000円以下 | 支払保険料等×1/4+25,000円 |
100,000円~ | 一律50,000円 |
参照:生命保険料控除|国税庁
生命保険料控除、個人年金保険料控除、介護医療保険料控除それぞれに適用されるため、最高で120,000万円まで控除を受けられます。
6.地震保険料控除
地震保険料を支払っている場合に、一定の所得控除を受けられる制度です。控除額は以下の通り。
区分 | 保険料 | 控除額 |
地震保険料 | 50,000円以下 | 支払金額の全額 |
50,000~ | 一律5万円 |
参照:生命保険料控除|国税庁
7.住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)
ローンで住宅を購入したり、リフォームした場合で、一定の要件を満たした場合に受けられる制度が住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)です。最長10年間、年間最大40万円の控除を受けられます。控除を受けるためには、次の要件を満たす必要があります。
- 新築等から6か月以内に居住している
- 特別控除を受ける年分の12月31日まで引き続き居住している
- 住宅の床面積が50平方メートル以上かつ、床面積の2分の1以上が自己が住むために使われている
- 特別控除を受ける年分の合計所得金額が3,000万円以下である
- ローン返済期間が10年以上ある
- 譲渡所得の課税の特例の適用を受けていないこと
- 贈与による住宅の取得でないこと
参照:生命保険料控除|国税庁
他にも細かい用件があるため、詳しくは国税庁のホームページ(一般住宅の新築等をした場合(住宅借入金等特別控除))をご確認ください。
8.NISA(少額投資非課税制度)
NISAは、投資で得た利益が非課税になる制度です。安定した資産形成を目的として作られました。通常、株式などの投資で利益を得た場合は20.315%の税金が課せられることになります。しかし、NISA口座を通した取引なら一定の金額が非課税になるのです。投資で稼ぎたいサラリーマンにとっては、大きな節税効果が期待できる方法といえるでしょう。
NISAには小額から毎月コツコツ投資できる「つみたてNISA」、自分のタイミングで運用できる「一般NISA」、子供の将来に向けた資産形成ができる「ジュニアNISA」があります。それぞれの違いは以下の通りです。
一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
対象者 | 20歳以上の人 | 20歳以上の人 | 0~19歳の人 |
運用期間 | 5年 | 20年 | 5年 |
年間非課税枠 | 120万円 | 40万円 | 80万円 |
払い出し制限 | なし | なし | 原則18歳まで不可 |
ただし、上記は2022年12月時点の制度です。2024年には新NISA制度が始まる予定です。制度変更により、非課税枠や運用期間が長くなると予想されます。詳細は金融庁のホームページ(NISAとは?)をご確認ください。
9.確定拠出年金(iDeCo)
確定拠出年金(iDeCo)は、老後の安定した資産形成を目的として作られた制度です。公的年金の上乗せ給付を保障する私的年金の一種で、自分で資産を積み立て運用できます。
支払った掛け金の全額が控除の対象かつ運用益にも課税されないので、有効な節税方法といえるでしょう。ただし、iDeCoの場合は原則60歳まで引き出しできません。払い出し自由なNISAとは異なるので注意が必要です。
NISAもiDeCoも大きな節税効果が期待できますが、どちらが自分に合っているか比較したうえで判断しましょう。併用して運用するのもおすすめです。
10.特定支出控除
給与をもらうサラリーマンは、基本的に仕事でかかった支出を経費として計上することはできません。しかし、特定支出控除を活用すれば、給与等から経費を控除することが可能です。例えば、以下は特定支出控除の対象となる可能性があります。
- 通勤費
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 勤務必要経費(交際費・図書費・衣服費など)
特定支出控除が適用されるためには「経費の金額が給与所得控除額の2分の1の金額を超えている」ことが条件です。例えば年収が500万円の人の場合、給与所得控除は以下の計算式で算出できます。
収入金額(500万円)×20%+44万円 = 144万円
144万円の2分の1の金額は72万円です。つまり、年間の経費が72万円を超えた分が特定支出控除の対象となります。しかし、それだけでは足りません。勤務先に「給与所得者の特定支出に関する証明書」を記入してもらう必要があります。そのうえで「給与所得者の特定支出に関する明細書」を作成し、自分で確定申告します。
サラリーマンが節税する際に注意するポイント
うまく活用できれば大きな節税効果が期待できますが、注意しなければならないポイントもあります。それが、以下の3つです。
- 節税効果が大きいのは青色申告
- 不適切な経費計上に注意
- 本当に必要な制度だけを活用する
詳しく解説します。
節税効果が大きいのは青色申告
副業に必要な経費は、白色申告でも計上可能です。そのため「わざわざ開業届と青色申告承認申請書を出さなくてもよいのでは?」と疑問に思う人もいるでしょう。しかし、白色申告では65万円の特別控除が使えません。
そのため、より大きな節税効果が期待できるのは青色申告なのです。ただし、青色申告できるのは副業が事業所得として認められた場合のみとなります。一時的な副収入など雑所得に該当する場合は、青色申告が使えないので注意しましょう。
具体的な納税額をシミュレーションして、青色申告にするかどうかを検討しておくとよいでしょう。
不適切な経費計上に注意
売上よりも多くの経費を計上して節税する、いわゆる「赤字副業」をしているサラリーマンもいます。しかし、不適切な経費計上には税務署も目を光らせているため注意が必要です。
プライベートな食事代や旅行代を「調査費」として計上する人もいるようですが、売り上げに対して極端に経費が高いと税務署からチェックが入る可能性があります。経費として認められなかった場合は納める税金を再計算しなければなりませんし、悪質だと認められた場合は脱税と判断されてしまうことも。節税ばかりに気を取られて、なんでも経費にするのは避けましょう。あくまでも「副業に必要な支出」のみとしてください。
本当に必要な制度だけを活用する
節税対策をすれば、本来納めるべき税金の負担を大幅に減らすこともできますが、必要以上に支出を増やさないことも大切です。例えば非課税だからといってiDeCoに無理な金額を積み立てれば、目先の生活資金に困ってしまうこともあるでしょう。節税のために支出が増えては本末転倒ですよね。本当に必要な制度だけを活用するようにしましょう。
まとめ
節税したいサラリーマンに副業がおすすめの理由と、おすすめの節税対策を解説しました。給与所得だと、節税できないと思っている人もいるかもしれませんが、方法はたくさんあります。小さな節税でもコツコツと続ければ、将来的に大きな得になるでしょう。
個人の資産運用に関して会社では教えてくれません。将来の資産形成のために今から学び、自分に有効な制度があれば活用してみてはいかがでしょうか。
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