夫の扶養に入ったままで、ちょっとしたお小遣い稼ぎに仕事をしている女性も多いでしょう。しかし子どもが大きくなって手が離れてくると、もう少し働いたほうがよいのではと気になってくるもの。
今の仕事の業務量を増やすことが難しい場合、もう一つ新しい仕事を始めてダブルワークするという選択肢があります。現在は在宅でできる仕事も増えており、掛け持ちで働く主婦も珍しくありません。今回はダブルワークを検討している人に向けて、そのメリットや注意点、扶養内に収めるための条件を解説します。
ダブルワークするメリット
ダブルワークは大変なイメージを持つ人も多いかもしれませんが、さまざまなメリットもあります。ここでは以下の4つのメリットを解説します。
- 自由な働き方ができる
- 交友や視野が広がる
- 家計の助けになる
- スキルや経験を増やせる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
自由な働き方ができる
複数の仕事を掛け持ちすることで、自由な働き方が可能になります。例えば収入源が飲食店のパートのみの場合、常に勤務先のシフトの都合に合わせなくてはなりません。
収入を増やしたいと思ったときも、時間単価制の仕事ならそれだけ労働時間を増やすことになります。勤続年数が上がるほど、パートでも責任が増してプレッシャーがかかる立場になるでしょう。
そうした状況を避けるためには、業務委託契約の在宅ワークと掛け持ちするのがおすすめです。場所や時間を選ばず取り組める在宅ワークに比重を置けば、パートで働きづめになって疲弊することもありません。人と話したり体を動かしたいと思ったときはパートを増やし、自分のペースで働きたいときは在宅ワークを増やすなど、自由な働き方ができるでしょう。
交友や視野が広がる
複数の仕事を経験すれば、交友関係が広がり、より大きな視野を持つことができます。子育て期間を経てパートを始めたとき、職場での新しい出会いが気分転換になった経験がある人も多いのではないでしょうか。ダブルワークすると、そこでまた新たな人間関係や話題があり、充実感が得られます。複数のコミュニティに属すれば、狭い人間関係のストレスにも悩まされずに済むのです。
さらに視野が広がれば、人としての魅力も増します。さまざまな仕事を経験していることで、家族や友人から一目置かれるようになるかもしれません。
家計の助けになる
ダブルワークすれば収入が増えるのはもちろん、安定が得られるのも大きなメリットです。今の時代は少しでもリスクを減らすために、収入源を1つに絞らないことが大切です。長年パートで勤めていたお店であっても、世の中の情勢によって大幅にシフトを減らされたり、お店そのものが無くなってしまう可能性もあります。在宅でできる仕事を掛け持ちすれば、収入がゼロになるリスクを避けられるでしょう。
子どもが成長するにつれ、教育費や生活費も膨らんでいきます。扶養内の仕事といえど、家計にとって大切な収入。不測の事態で断たれてしまわないように、ダブルワークで安定した収入を得ることが大切です。
スキルや経験を増やせる
スキルアップを目指したい、向上心のある人にもダブルワークがおすすめです。子どもが小さいうちは扶養内で働き、子どもが手を離れたらもっと稼ぎたいと考えている人もいるでしょう。転職するときにアピールできるスキルは多く身に付けるに越したことはありません。ダブルワークで複数の仕事を経験することで、将来の可能性が広がります。
ダブルワークのうち1つは、スキルアップを目的として仕事を選ぶ人もいます。例えばメインは事務職のパートとして働き、もう一方は未経験からWebデザインの仕事に挑戦するといった方法です。
Webデザインの仕事は最初のうちはほとんど収入になりませんが、コツコツ実績を積むことで報酬は上がっていきます。パートが体力的に負担になった頃、自宅でもできるWebデザインの仕事に軸足を移すことも可能です。
主婦がダブルワークする際の注意点
ここでは主婦がダブルワークを始めたときに起きやすい問題を解説します。一般的に注意すべきは以下の4点です。
- 税金が増える可能性
- 社会保険に入る必要がでてくる可能性
- 配偶者控除が受けられない可能性
- 確定申告が必要になる可能性
それぞれ詳しく見ていきましょう。
税金が増える可能性
ダブルワークで収入が増えたとき、まず所得税の問題が出てきます。年収103万円を超えると、税制上は配偶者の扶養を外れて、自身で所得税を支払う必要があります。頑張って働いたのに手取り額が減ることになるので、がっかりする人もいるでしょう。けれど所得税とは、一定の収入を得れば本来誰もが納めるべき税なのです。
さらに年収103万円を超えると、配偶者控除も外れて、配偶者の税負担も増える可能性があります。配偶者控除については後ほど詳しく説明します。
社会保険に入る必要がでてくる可能性
ダブルワークで収入が増えると、夫の扶養から外れて自分で社会保険に入らなくてはなりません。年収が130万円以上になると、無条件で社会保険の加入が義務づけられます。自分で社会保険料を収めなくてはならず、手取りの額が減ってしまいます。社会保険料を払うことで損をする収入のゾーンは130万円から160万円のあいだといわれていて、頑張っても160万円に達しない場合は129万円までに抑えたほうがよいでしょう。
ただし、130万円未満であれば必ず夫の扶養に入れるわけではありません。夫の扶養に入る条件、自分の勤務先の社会保険に加入しなくてすむ条件がそれぞれ設定されているので、後ほど詳しく解説します。
配偶者控除が受けられない可能性
ダブルワークは自分の税金や社会保険だけでなく、配偶者が払う税金の額にも影響する可能性があります。年収が103万円を超えると、配偶者控除の対象外となります。配偶者控除とは、例えば妻がパート勤務で収入が少ない場合、夫は妻を扶養しなくてはならないので、その分税負担を減らす制度です。妻の年収が多ければ必要がないと判断され、控除は受けられなくなります。
ただし、103万円を超えて配偶者控除の枠を出ても、配偶者特別控除が受けられます。配偶者特別控除は年収150万円以内であることが条件です。夫と妻のそれぞれの収入に応じた控除が受けられるので、年収150万円を超えない限りは、実際の税負担が増えることはないでしょう。
確定申告が必要になる可能性
ダブルワークすると、かなりの確率で確定申告が必要になります。必ず確定申告が必要なのは、複数の企業にパートとして勤務し、給与所得を受け取っている場合です。一つの企業でしか年末調整できないため、メインの勤務先では年末調整を受けられますが、もう一つのパートの収入は自分で確定申告しなくてはなりません。
また、給与所得と雑所得の組み合わせでダブルワークする場合もあります。雑所得はネットショップで物を売ったり、クラウドソーシングサイトでデータ入力の仕事などを請け負ったりして得る収益のことです。
この場合、給与所得は年末調整を受けて、雑所得は年間で合計20万円を超えれば確定申告が必要になります。確定申告を怠ると、追徴課税などのペナルティが発生するので注意しましょう。
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夫の扶養内になる条件
夫の扶養内で働くためには、夫の職場の健康保険組合の扶養条件を満たしており、なおかつ自分の職場の社会保険加入の対象外となる必要があります。パートの社会保険加入条件については後ほど説明し、ここでは夫の社会保険の扶養内となる条件を確認しましょう。
原則として扶養の対象と認めるかどうかは、個々の健康保険組合の判断になります。収入が少なくても、フリーランスとして開業届を出した場合は扶養の対象外とみなす組合もあるのです。ダブルワークを始めるときは、事前に扶養の条件について確認しておきましょう。
一般的には、1年間の収入が130万円未満であることが条件となっています。このときダブルワークの人が注意すべきは、2つの仕事の収入を合算して考えることです。例えばA社で70万円、B社で60万円の収入がある場合、それぞれは130万円未満です。しかし合計すると130万円になるので、扶養の対象外となります。
社会保険加入が必要になるケース
パートタイムでも条件を満たせば、必ず社会保険に加入しなくてはなりません。収入に応じて社会保険料の支払いも必要になるので、配偶者の扶養内で働きたい場合は、加入条件をあらかじめ理解しておきましょう。
加入条件の1つは、年収130万円以上であること。そして1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上あることです。一般的には正社員が週40時間として、週30時間以上働くと社会保険の対象となります。また労働時間が正社員の4分の3に満たない場合も、以下の条件をすべて満たせば加入対象です。
- 年収106万円以上であること
- 1週間の所定労働時間が週20時間以上であること
- 1年以上の雇用見込みがあること
- 学生でないこと
関連記事:正社員がダブルワークでアルバイトする際の注意点とは
扶養から外れないように労働時間を調節するのは大変ですが、あらかじめ勤務先に相談しておけば協力してもらえる場合も多いでしょう。
関連記事:【最新版】ダブルワークすると社会保険はどうなるの?注意点も解説
まとめ
配偶者の扶養内でダブルワークするために必要な、税金や社会保険などの注意点を中心に解説しました。複数の仕事を掛け持ちすると、1年間の合計の収入がいくらになるのか管理が大変になり仕事や副業をやめたくなるかもしれません。また社会保険の扶養内でいられるかどうかは、個々の保険組合によって条件が変わるので、新しい仕事を始めるたびに確認が必要です。
ダブルワークでそれぞれの仕事に励んでいると収入も増え、いずれ扶養内に収めることが難しくなるかもしれません。扶養を外れると自分で保険料を払わなくてはなりませんが、将来的に年金が増えるなどのメリットもあります。ダブルワークでスキルや経験値を上げて自信がつけば、早めに扶養を出てしっかり稼ぐことを検討してみるのもよいでしょう。
扶養控除|国税庁
配偶者の扶養の範囲内でお勤めのみなさま|社会保険適用拡大特設サイト(厚生労働省)
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